novel(long)

□学園祭の試練〜焦心
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文化祭当日―。

「ま、間に合った〜!」

ウソップとサンジ。2人は結局、完徹してフラフラになりながら、メインゲートに堂々と立て掛けられたボードを眺める。

ウソップは無言で一つ一つ色の確認をしている。

感無量だろう…。

サンジはそんなウソップを眩しそうに眺めていたが、ハタッと何かに気づく。

「うおっ、やべぇ!」
「ど、どうした?サンジ」
「ウソップ、俺、調理室に行くな」

そう言うとサンジは腕まくりをしながら猛ダッシュで走って行く。

ウソップも気づいたようだ。

「サンジ!ありがとな!俺も後で手伝いに行くから!」
「おう!」

サンジはこちらを振り向かないまま、手だけを挙げて校舎へ入って行った。



「な〜に〜、今まで2人でいたの〜?」
「Σナミ!?」

振り返るとナミが立て掛けてあるボードを眺めながら立っていた。

「ナミ、どうだ!この出来栄え!」

ウソップは威張り口調で長い鼻をより高く見せながら、ナミに問う。

「………まぁまぁじゃない?」
「……ι」

この力作…、ナミにしてみりゃこんなもんなのか……。

ウソップは寝不足な状態に、追い打ちを掛けたナミからの鉄拳を食らいつつも、道具の片づけによろよろと向かった…。



当日準備をする為、早い時間にもかかわらず、
生徒達が続々と登校してきた。

サンジはウソップと別れた後、大急ぎで調理室のオーブンに火を着け、予定の数種類のケーキ作りを手早く始めた。

「バラティエ」で手伝い兼コック見習いをしているものの、試作品や毎回作る賄い程度の評価を周りのコック達に聞くだけじゃ、自分の腕が本当はどうなのかはっきり知る事が出来ない。

今回の助っ人に関しては、ナミへの有志が大半を占めるが、残りは自分の手で作られるモノの評価が目で見られるという事もあり、サンジにとっても絶好のチャンスなのだ。

ウソップも道具を美術室に片づけた後、最後の会場作りの仕上げの手伝いにナミの元へ向かった。


ナミの喫茶店の主体となっているモノは、"本格的紅茶と絶品ケーキを格安で味わいながら、心癒せるティールーム♪"。

紅茶は、もちろん、葉からティーポットで煎れ、ケーキの種類は少ないが、味は格別と言うモノ。

紅茶はナミの得意分野で、規定範囲内の予算で、香り、味、すべて自分好みの最高の物を選び抜いて仕入れてきた。

ケーキ担当はもちろんサンジだ。

料理上手という評判も高いが、デザートを作らせても "絶品"という事は、知る人ぞ知る。

ましてや巷で評判の"バラティエ"の跡継ぎなどという看板があれば、低料金の上、高校の学園祭でそんな味が味わえるなどというラッキーな宣伝を見逃すような
スゥィート好きな女生徒はいないであろう。

会場は秋らしい"癒し"の色をメインにしており、当日まではアイディア提供のみだったウソップも、当日は自ら手を入れ、秋らしくイチョウの葉や木の実をディスプレーして、落ち着ける感じの良い雰囲気となった。

あとは、客引きだ。

ナミの人脈から数人を助っ人に呼んでいたが、切り札になる人材もナミはちゃんと考えていた。
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