novel(long)

□バイトの試練〜願い事
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ウソップは、今日もバイトに励んでいる。

世間は嬉い楽しい祝日といえども、毎日の生活が掛かっているウソップには休み無し。

こんな時こそ、働かねば…。

サンジも、今日は出らしい。

11月にもなると、来月の大イベントを皆、意識するためか、俄然、カップルの来客が増え始める。

そうなるに従い、カップルのデートスポットに最適なレストラン"バラティエ"も一層、大忙しとなる。

週末、祝日は当たり前、平日さえも大混みで、ここ数週間、休日平日関係無く、毎日サンジも見習い兼手伝いに通い詰めだった。

そうなると、自然とウソップのバイト日数も増える形になり、サンジやルフィ達とのレジャーも当分お預けという事になりそうだ。


店内では夏の終わり頃から、早々と肉まん、あんまん、おでんの香りが漂い始めていた。

その時期には、それほど見向きもされずに売れ残っていたコイツ等も、この時期にもなると一気に売れ始め、一日中店内が美味しそうな香りで包まれる。

外は木枯らしが吹き始め、店の自動ドアが開く度、ブルリと体が震える事も多くなった。

ひゅるりと冷たい風を感じ、反応するチャイムと同時にドアの方に目をやると、小さな男の子が立っていた。

今時はこの位の年の子も一人きりで店に出入りすることも少ない無いので、特別珍しくも無いが、その少年は頭にどハデなピンクのあったかそうな帽子を被っていたので、余計に目に付いたのだろう。

その少年は暫く店内を歩き回った後、ウソップのいるレジの方をちらりと目配したと思えば、何も買わずに再びチャイムを鳴らして、外へ出て行ってしまった。

「ん〜?何だったんだ?」

ウソップはちょっとだけ気になったが、まぁ今時は変わった子もいるからな…と片づけた。

お昼どきの忙しい時間が過ぎ、店の来客も一段落して、ウソップは店の前にあるゴミ箱のゴミをまとめようと外に出た。

「うぉっ、さぶっ!」

冷たい空気が一気に体を包み、体温を下げる。

ブルッと身震いしながらもゴミを袋に詰めようと、ふと目をやると、ゴミ箱の脇にさっきの少年がちょこんと座り込んでいた。

「お?お前、もしかしてずっとここにいたのか?」

ウソップの声に驚いたのかビクッと体を震わせて、ゆっくりと顔を上げた。

少年の顔はちょっと泣いている様にも見え、大きな瞳と同じように小さな鼻もうっすら紅く色付いていた。

「中に入れよ、寒いだろ?」

ウソップが優しい口調で聞くが、少年はふるふると首を振る。

「気にしなくていいぜ、俺しかいねぇから。な?」

ウソップが笑顔でゆっくり手を差し出すと、少年はその笑顔に安心したのか、ゆっくり頷くと、 ウソップの手をぎゅっと握りしめ、その場所からようやく立ち上がった。

少年は名前を"チョッパー"と言い、何故このコンビニの前に長い時間いたのかというと、この店で働いているらしい兄を待っていると言うのだ。

ウソップは少年をカウンターの奥まった所で椅子に座らせ、暖かいホットチョコレートの缶を手渡した。

「ありがとう」

よほど寒かったのか、それともチョコレートが大好きなのか、少年はにっこりと笑うと両手に缶をぎゅっと握りしめながらコクコクとおいしそうな音を立てながら飲み始めた。

「なぁ、もしかして、お前の兄ちゃんて…」
「あのね」

チョッパーがそう言い掛けたと同時にドアチャイムと共に、冷たい風が入り口から吹き込んだ。

「よぉ」

緑髪の頭をボリボリと掻きながら大欠伸のゾロが、二人がいる方向にのっそりと歩いてきた。

「よお、ゾ」
「ゾロ!!」

ウソップがその名前を呼びかけた瞬間、椅子からぴょんと飛び降り、店中に響き渡る大きな声でチョッパーも同じ名前を叫んでいた。

「!?チョッパー?!」

ピョコピョコと音の鳴るような足取りで、驚いた顔のゾロ目掛けてチョッパーは走り出して行った。
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