novel(long)
□バイトの試練〜秘密
1ページ/6ページ
あれから数日、ゾロのいない日だけを選び、チョッパーは1時間だけのアルバイトに来ている。
ウソップが事前にゾロの勤務予定をチョッパーに教え、間違ってもゾロと鉢合わないように気を遣っての事だった。が、フラリとゾロが店に立ち寄るような事があれば、その時は正直に白状せざる得ない。
でも、あのゾロだ。
間違ってもバイトが休みの日に、そんな隣町のコンビニまで来るなんて事あり得ないだろう。
言って置くが、ロビンにはちゃんと承諾済みである。
目標の金額はその時間、2週間もあれば達成できる。
それまでは、ウソップ&チョッパー2人だけの極秘任務となるわけだ。
「よお」
「サンジ?」
バイトが終わり、ちょっとばかりの食材が入った買い物袋を片手に持ちながら、機嫌良く上り慣れた階段を上り切ると、部屋の前にどかりと座り込んだサンジがいた。
金髪頭に睨みを利かせた目つき、ヤンキー座りに煙草をもプカプカ吹かしているその姿は明らかに怪しい人物にしか見えない。
いつもサンジを見ると思う事だったが、口に出す様な事は間違ってもしない。
そんな言葉を口にでもしたら命の補償など無い事は、
ウソップは百も承知だ。
「…何でこんなとこにいるんだよっ」
「あぁ?いちゃ悪ぃのかよ」
「お前、鍵は?」
「家」
「アホかぁ!何やってんだよっ。折角作ったのに、意味ねぇだろうがっ」
「うるせぇ」
鍵と言えば、サンジはウソップの家のスペアキーを持っている。
数ヶ月前、ウソップがサンジに渡したのだ。
いつでも、家で待っていられる様に…。
だが、持って来なければ全く意味が無い。
「今まで、一度も使ってねぇじゃん。作らなくても良かったんじゃねぇか…」
ウソップは大きなバックから素早く鍵を見つけると、ガチャリと慣れた手付きで鍵を開けた。
「んなこたぁねぇだろ?急用って時にはあった方がいいだろ?たとえば、お前が熱でぶっ倒れた時とか、腹痛でぶっ倒れた時とか」
「縁起でもねぇ事、言うんじゃねぇっ」
真っ赤な顔をしてマジ切れするウソップを横目に、クククと笑いながら部屋に入る。
いつもの匂いに安心する。
いつものように持って来た賄いをウソップに渡し、サンジはいつもの場所に腰を置く。
座布団がひんやりと感じ、冷えた身体を余計に震えさせた。
上着に突っ込んだままの凍えた手にチャリンと当たる、冷たい感触。
あれは嘘つきについた真っ赤なウソ。
ウソップに貰ったこの部屋の鍵は、自宅の鍵といつも一緒に、ポケットの中。
あの日から、肌身離さず持ち歩いているが一度も活躍した事がないのは本当の話。
サンジは、家の前で待つのが好きだった。
必ず家主が帰ってくるという確信とあの嬉しそうな楽しそうな顔をしながら階段を上ってくる音が段々と近づいてくるあの緊張、ここに通い始めて2年、サンジには無くしたくない瞬間なのだ。
「サンジ、いつもありがとな。ではでは、いただきま〜す」
「おう、遠慮無く食いやがれっ」
そして、2人の時間がやってくる。