novel(short)

□ロマンチストとエゴイスト
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あいつを見つけた。

学校から最寄り駅まで続く、長い長い一本道。

毎日のように必ず目にする金糸の髪を見間違う事も、見落とす事も出来ないほどに、俺の所へ通い詰めたあいつ、サンジ。

普段は女の子に目がないハズなのに、俺だけ、俺だけには女の子と同じ様に特別に扱う。

「てめェ、きのこを残すんじゃねェよっ!」
「このやろう、聞けよ、俺の話を!」
「もたもたすんじゃねェ、長っ鼻!」

い、いや…、口は確かに悪いι

そこじゃねェんだ、俺の言いたい所は。


たとえば、サンジは料理が得意だ。

それに、美味い。

俺に毎日、手作り弁当を作って持って来てくれる。

あいつに会うまで毎日、市販の菓子パンばかりを食っていた俺には、かなりありがたい事だった。

でも毎日だぜ?

あいつも大変だろうと一度だけ遠慮した事があった。

「何言ってやがんだ、このクソ野郎!てめェが断るなんざ100年早ェんだよ!!」

今後一切、遠慮なんぞするもんじゃねェと心に決めるほどの蹴りを頂戴した。

それもあいつの優しさだ。


それから、沢山の重そうな教材を運んでいた女の先生がいた。

大変そうだったんで、非力な俺様も少しは役に立てるかと声を掛けた、うちの担任だったし。

その担任が「ありがとう、頼むわね」と俺に微笑みかけた瞬間、

「どけ、長っ鼻!」

またもやお決まりのサンジのシュートが俺の鳩尾に入った。

「俺が手伝いましょう、さぁ、どうぞ♪」

腹を抱えて踞っている俺に振り返りもせず、去って行ったあいつ。

それも、あいつならではの優しさ…優しさだぁ?んなわけねェだろ!!



俺は毎日の元気の源、○×印のコーヒー牛乳をゴクゴクと一気に飲み干して、宿敵サンジを屋上で待ちかまえた。

今日こそは溜まっているモノ全てを吐き出してやろうと。

来たっ!!

「おいサンジ!いい加減にしろよっ!毎日毎日飽きもせず俺につきまとうのは!!」

「な〜に言ってやがんだ、てめェは。全てお前への"愛"だろうが!」
「はぁ?第一、何で俺なんだよιお前はレディが好きなんじゃねェのか?俺は男だしそんな特別はいらねェ!優しくなんかして欲しくねェよ!!」

叩き返してやった、ビシッと!!

今までのそのサンジが言うエゴとしか言えねェ様な偏屈な"愛"とやらを。

してやったりと息を切らせて怒鳴り散らしたこの俺様に、俺が予測してた表情をサンジは全く以て見せずに、ただただ笑っている。

それも、ニヤリと口の端を持ち上げるように…。

「な、な、何笑ってんだ!わかったな!俺を見くびるなよっ!」
「ああ、良〜くわかった」

や、やけに素直だ…ι何かあるんじゃねェのか?おいι

そうこうしてるうちにサンジが徐々にこっちへ向かって来て、構えのポーズをとる俺の目の前に…

「これからはてめェなんかに優しくしねェし遠慮もしねェ。俺もその方が気が楽だしよっ!あ〜甘ったりいもんばっか飲むなよ、虫歯になんぞ」

サンジの笑い声が段々と遠ざかり、バタンッとドアの閉まる音が響く、俺の頭の中をぐわんぐわんと…。

「く、く、口付けて行きやがった!」

やられた…ι

俺様のファーストキスを返しやがれ!!


学校から最寄り駅まで続く、長い長い一本道。

あいつを見掛けて走り寄る、俺。

あれからサンジがしつこく付きまとってくる事はなくなったが、それもそのハズ、

「よ、サンジ。今、帰りか?一緒に帰ろうぜ」
「お、ウソップ。そりゃあいいけど、覚悟してんだろうな、おい」
「いや、帰るだけだ、覚悟なんていらねェだろっ」
「ただで帰れるとは思ってねェよな?」
「……や、やっぱり一人でカエリマス」
「ウソップ、男だろ?今更ロマンチックもクソもねェんだよっ!」
「いや、ロマンは大切だよ、サンジくんι」

後悔しても、もう遅い。

キスまでされたとなっちゃあ、黙っていられるハズがねェ。

そんじゃ、男ウソップ、その偏屈な"愛"とやら、受けて立ってやろうじゃねェか!

その代わりに俺製法の純朴な"愛"?で叩き返してやるけどなっ!


[END]

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