novel(event)
□火のない所に煙は立たない〜2
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「こんにちは…」
「お、来たな!」
「来ました…ι」
ウソップは約束通り、弁当屋にやって来た。
昨日の晩から、今日も一日勉強どころじゃなく、時間を気にし、帰り道を気にし、落ち着きのないウソップを心配する友人達の声も耳に入らないほど。
弁当屋へ近付くに従って、胸の鼓動がドキドキと高鳴った。
相変わらずの金髪、顎髭に、全く不似合いな弁当屋のニッコリとした笑顔がウソップに向けられ、胸の鼓動が最高潮になったうえに体温まで一気に上昇する始末。
「ほら、約束してたスペシャル弁当。美味すぎてアゴ外すなよ!」
弁当を差し出されウソップは代金を手渡す。と同時に永遠笑顔のままの弁当屋に、ウソップは意を決して視線を向ける。
「て、店長さん!」
「ん?」
「あの…店長さんの名前って…///」
「こんにちは〜♪」
「あ、いらっしゃい!」
ウソップの横から淡い色のスーツを着た会社帰りのOLさんらしき女性が店に顔を出した。
ふんわりと良い香りのする大人の女性にウソップは尻込みし、思わず後退りする。
弁当屋が笑顔で注文を聞いている姿を暫く見ていたウソップだったが、弁当屋と視線が合ったキリを見て、ちょこんと頭を下げその場から歩き出す。
「ウソップ!また明日な!」
「キャ!何!?びっくりした〜、どうしたの?サンジ君」
弁当屋の叫び声はしっかりとウソップまで聞こえていたが、ウソップは振り向かなかった。
何故なら確かめるまでもなく、自分の顔が真っ赤になっている自覚があったから。
遠くから店長の話し声と明るい笑い声が聞こえ、それと共にウソップの耳に届いた言葉。
「店長さん、サンジっていうんだ…」
名前を知ったからといって今更呼び方を変えるつもりはないが、ウソップの顔は零れんばかりの笑顔だ。
結局その表情が解けないまま、アパートに辿り着き階段を上がる。
顔を挙げると目の前に、ジィッと自分を見ていたと思われる人物に出くわした。
「よお」
「買]、ゾロ!!」
ゾロはウソップの隣に住む大学生でそれほど親しくは無いが、時間が合えばたまに夕食を一緒に食べる位の付き合いはあった。
ウソップは何事も無かったかの様に、にやけた顔を笑顔に変え、慌てて誤魔化す。
「お前もこれから飯?」
ゾロの手にはウソップと同じ様にビニール袋が下げられている。
「ウソップ、何か良い事でもあったのか?」
「え!?」
「お前の顔、さっきからずっとだらしねぇ事になってるぜ」
「////ιι」
顔を真っ赤にしながらわたわたと慌てふためくウソップをゾロは見詰める。
「ウソップ、うちに来るか?」
「へ?」
「お前も今から飯だろ?」
そう言いながらゾロはさっさと部屋へ入ってしまった。
「お前が部屋に呼んでくれるなんて珍しいじゃねぇか…って、俺に考させる隙も無しかよ!」
ウソップはぶつぶつ一人突っ込みを入れながら鞄を部屋へ放り込み、弁当だけを手に持ち、ゾロの部屋へと向かう。
「…お邪魔しま〜す」
ゾロの部屋のドアがパタリと閉まり、中から話し声が聞こえる。
「嘘だろ…ι冗談じゃねぇιι」
ゾロ部屋の前には湯気立つスープカップを手に持ち、呆然と立ち尽くしているサンジの姿があった。