novel(event) 

□がんばる保育士さん!参の巻
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幼稚園ってとこは1年のうちにやたらとたくさんの行事がある。

ついこの間、"親子給食会"が終わったかと思えば、今度はお母さん達との親睦を兼ねて、ミニ運動会が行われる。

これは学年ごと日を変えて行われるので、俺たち年中クラスは「ひつじ組」、「かるがも組」、「きつね組」の3クラス対抗だ。

うちのひつじ組と違ってビビが持っているクラス「かるがも組」はクラスのまとまりが良くて、今年の1位候補だ。

コニスのクラス「きつね組」はマイペースな子が多いらしくのんびりとしたクラスみたいなんだけど、あのコニスだ、褒めて伸ばしてうまく盛り上げているらしい。

そんな事より心配なのはうちのクラスだ。

戦力はかなりあるハズなのに、団結力に欠けている気がする。

ここはどうにかして担任の俺様がみんなを1つにまとめなきゃならねぇんだけど、どうすりゃいいのか…、新任の俺としてはそれが今の悩みの種だ。

「せんせい、そういうときはこれよ、コレ!」

ナミちゃんが可愛い笑顔を向けながら、指で小さな輪っかの形を作る。

「ナ、ナミちゃんι、それはやべぇだろ…ι」
「せんせい、そんなこといって、やすいおきゅうりょうなのにこがねためてるのしってるんだから」
「狽ネ、なんでそんな事知ってんだっ!?大人を馬鹿にすんじゃねぇ〜!」

キャーと逃げ回るナミちゃんに溜め息を漏らしつつ、視線を感じる方へ顔を向ける。

そこにはいつものようにちょこんと座り込んで、本を読んでいたはずのロビンちゃんがこちらを見詰めていた。

「せんせい、おかねじゃなきゃいいんでしょ?こどもはあまいものがだいすきよ」

そう一言呟くように言うと、ロビンちゃんは再び本を読み始めた。

こ、子供って…ιお前もだろっ!なんて突っ込みはさておき、

「食いもんで釣るってのもなぁ…」

などと思いつつも、大騒ぎする「ひつじ組」の子供達を見詰めながらこの案も一理あると、ウソップは密かにこの計画を実行に移すのだった。


「っても、お菓子なんか作ったことねぇしι」

ウソップは家への帰り道にある大型スーパーのお菓子材料売り場の前で腕組み考え込む。

「だからって売ってるもんを買うのもな…」

ウソップが長い間唸るように考え込んでいると、「よぉ」と後ろから弾みのある聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「チ、チビナス君のお兄さんっ!!」
「お兄さんって呼ぶなっつっただろっ」
「狽ヘっ!そ、そうでした…ι」
「それより、何さっきから奇妙なアホ面して小麦粉と睨めっこしてやがんだ」
「き、奇妙なアホ面っておい…ι」

ぶつぶつとサンジには聞こえない位の小声で呟きつつも、ウソップはこうなった経緯をサンジに話してみた。

「そりゃ、やっぱ手作りだろ?」

目の前にある商品棚から小麦粉の袋を掴み取りながらサンジは答える。

「で、でもよ…、お菓子なんか作ったことねぇしι」
「よぉ、今日これからヒマか?」
「へ?うおっ!」

サンジはそれ以上何も言わず、ニヤリとした笑顔を一瞬向けたかと思うと、ウソップの手にある空のままの買い物かごに小麦粉の袋を次々と落としていった。



ミニ運動会前日。

手元にはひとつずつ可愛らしくリボンを掛けられたたくさんの小袋。

あの日あのまま定休日だったレストランの厨房に半ば強引に連れて行かれ、サンジのお菓子作り教室が開かれたのだった。

子供達の為のお菓子作りと言えども、そんな生ぬるいものじゃぁ無い。

「おら、初心者は1gの狂いもなくちゃんと量れ!」
「口を動かすんじゃねぇ!手ぇ動かせっ!」
「最後まで気を抜くな!食べてもらうまでがもてなしだ!!」

などと朝方まで何度も作り直しを命ぜられ、容赦なくサンジにしごかれたのだった。

とはいうものの、ウソップの手の中には初めてとは思えないほどに綺麗に完成したクッキー達がある。

これもすべてサンジの特訓のお陰だ。

完成後、色も形も申し分もなく出来上がったクッキーを摘みつつサンジに煎れてもらった紅茶の味を思い出す。

「せんせい、なににやにやしてるの〜?すけべなことかんがえてたんでしょ?」
「////な、なに言ってんだっ、そ、そんなわけねぇだろ!ι」

子供達を前に顔を真っ赤にして慌てふためく態度が何よりも怪しい…。

「そ、それより…みんな明日の運動会、頑張ろうなっ!!」

ウソップが力拳を作って勢いよく叫ぶが、

「ふぁ〜〜〜い」

子供達の力無い反応にウソップは脱力する。

「お、おい〜ιやる気出せよ〜ιもし優勝した暁には、俺様特製のプレゼントがあんだけどな〜」
「ええ!?せんせい、ホント?!」
「あ、ああ、ほ、本当だ!」
「せんせい!いまのやくそくわすれないでよっ!!みんな!あしたのうんどうかい、ゆうしょうするわよ〜!!」
「おおー!!!」
「…ιι」

こ、子供ってやつは…ι。

"プレゼント"という言葉で子供達の態度がコロッと変わったものの、漸くやる気になってくれたなら文句は無い。

ウソップも改めて気合いを入れ直し、明日の運動会に気持ちを向けるのだった。
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