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□春模様10のお題〜09 どきどき
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次の日、朝方には雨はすっかり上がり、水平線に眩しい陽の光が顔を出す。
ウソップはいつもより早い時間に起きだし、リビングへと足を運ぶ。
ドアを開くと、すでにキッチンにはサンジが立っており、いつも通りの軽快な動きで朝食の準備をしていた。
「おす、サンジ」
「何だウソップ、今朝は早ぇな」
ウソップに笑顔を向けつつも、サンジは調理する手を止める事は無い。
昨日、フランキーがここへ運び込んでくれたテーブルを横目で見ながら、キッチンのカウンターの椅子に腰を下ろす。
「コーヒー飲むか?」
「いいのか?」
そう聞き返すと同時に、ウソップの目の前に差し出される湯気立つマグカップ。
ウソップの好きなミルクたっぷり甘めのコーヒー。
「早っ!!さ、サンキュー♪」
「どういたしまして」
相変わらずのサンジの手際に感心しながら照れくさそうにまぶしい笑顔を向ける。
く〜〜〜〜!
このまったりとしたウソップとの二人だけの時間。
誰にも邪魔されず、俺だけに見せるコイツの笑顔。
可愛いったらありゃしねぇ!!
昨日のフランキーに向けるこいつの視線はちょいと気になったが、ホラ見ろ!
全くの気の所為じゃねぇか!
もしかしてこいつ、ロボ野郎に…なんて一瞬でも思っちまった自分が不甲斐ねぇ。
「ウソップ、おかわりは?」
「あ、いる!って俺何の為に早起きしたんだよっι」
手を差し出すサンジを差し置いて、ウソップはカップをカウンターに置き立ち上がる。
チッ!気付きやがったι
少しでも二人きりでいたくて、気を逸らしてたのによ…
「んなの後でもいいんじゃねぇのか?」
「アホウ!今のうちに片しとかねぇとナミがまたうるせぇだろιそれに、ここにテーブル置きっぱなしにしてたら邪魔じゃねぇか。折角フランキーが運んでくれたんだしよ〜。お、これもこれもまだまだ使えそう」
ウソップはテーブルの上にある色とりどりのキャンドルを一つずつ確認しながら丁寧に箱に詰める。
そんなウソップの楽しそうな姿を見ながら、サンジの頭に思い浮かぶのはあんちくしょうの顔。
こいつは全く気付いてねぇんだろうな…。
俺達、いや、ここ最近はこいつの姿ばかりをあいつが追いかけていた事。
それも俺らに対しての興味本位なのか、単なる暇だっつうだけなのか、俺も大して気にしてなかったはずなのに、最近のウソップに向けるあいつの視線?眼差しが普通じゃねぇ…あれは絶てぇ気がある顔だ!
とはいえ、あいつ自身自覚があるのかないのか…。
ブツブツ独り言を言いながらキャンドルを片づけるウソップにサンジが近づこうとした時、キイとリビングの扉が開く。
「よお」
「何だフランキー、お前も今朝は早ぇな」
「ああ、昨日置きっぱなしにしといたテーブルを片付けようと思ってな」
「そっか。昨日はサンキュー!作り直しする様な物もあるけど、お前のおかげでほとんどこのままでも使えそうだ」
「そうか、そりゃ良かったな」
サンジは何も言わず二人のやり取りをジッと見詰める。
「そんじゃ俺これ片づけてくる…って狽、おっι!!」
テーブルの足につまずきウソップが前のめりに体勢を崩す。
手を着くにも両手がふさがってた為、顔面から床へ激突する覚悟をしたウソップだったが、いつまで経ってもその衝撃は訪れない。
咄嗟に瞑ってしまっていた目を恐る恐る開くと、床を目前に身体はしっかと何かに支えられていた。
「え?!フ、フランキー?」
「げっ煤I!うおーい!てめぇ何やってんだよっ!!」
ウソップを後ろから抱き抱えたフランキーにサンジは即座に駆け寄り、無理矢理引き剥がす。
「サ、サンキューフランキー、助かったぜι」
「い、いや」
「ん?サンジ、どうしたんだお前血相変えて…あ、俺これ置いてくるな〜」
ウソップは笑顔を向けながらリビングを出ていき、二人その場に残された。
…い、今のはたまたまだよなι
不可抗力だった!仕方ねぇ!!
ウソップはまるで意識して無かったみたいだし、こいつだって別に何も…
サンジは微動だにしないフランキーの顔をチラと見上げる。
「煤I!お、おいιフランキー?」
「//////…な、何だこの心臓のドキドキιιどっかオーバーヒートしちまったのか?俺は…ι」
落ちやがった…ιιι
ハァァァ…ιι
あんのクソ長っ鼻〜〜っ!!!
どんだけ可愛さひけらかしやがるんだよっ!!!!
強面の顔とは対照的に、耳まで真っ赤にして立ち尽くすフランキーを見上げながら、サンジはこの先起こるであろう狙撃手を賭けた勝負に身を構える。
そう易々と持って行かれてたまるかっての!!
サンジの中で恋のゴングが鳴り響くのが、今聞こえた気がした。
続く…
→あとがき