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□冬模様10のお題〜01 前髪
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いつも思うんだけど、あいつの髪って、キレイだよな…。

サラサラしてて、つやつやしてて、髪の毛じゃねェような。

絹糸って、あんな感じなのかも。

料理をしている時も、ナミ達にデレデレしてる時も、闘っている時さえもキラキラして眩しい位だ。

その髪にいつも隠れている左目。

俺、見た事ねェんだ、実は…。

ちらっと見えそうになった事はあったんだけど、なんか、逸らしちまったんだよなぁ。

なんか見ちゃいけねェ感じがして。

まぁ、右眉と同じぐる眉に右目と同じ蒼色の左目なんだろうけど、実際、見てみない事には何とも言えねぇ。

もしかして見ちゃったらどうにかなったりしてな、石んなったりとか…?んなわけねェってι

そういや前に、なんで伸ばしてるのかを聞いた事があったんだけど、珍しく照れた風にこう言ったんだ。

「…クソじじいへの小さな反抗?」

サンジが未だにやめられない煙草もそのひとつだって言ってた。

俺にはそんな人いなかったから良く解んねェけど。

髪の毛はまぁいいとしても、煙草はやめた方がいいんじゃねェのか?

体にも良くねェし、ましてや自称一流コックなんだろ?

今まで食い物の中に煙草の灰なんか入ってた試しはねェけど、やっぱり吸わないに越した方がいいんじゃねェ?

でもよ、あいつにとっての精神安定剤でどうしようもないってなら、仕方がねぇかって気にもなっちまうんだよなぁ、あいつ超〜気が短けェし。

それに…煙草を銜えてるサンジってのが俺から見たら当たり前なんであって、吸ってないまんまのあいつと目が合ったりすると、どうしてか緊張しちまうんだよι

そんなんでドキってんのに、その上あいつの両目が見えてたりしてたらどうすんだよっ。

ぜ、絶対ェ、目、合わせらんねェι

「おいウソップ。なに一人でニヤけてんだ?」
「サ、サンジッ!?べ、別ににやけてなんかねェだろっ」
「な〜に怒ってんだ?」
「怒ってなんか…ねェよ…」

ほら、また、いつものように煙草を吸い出しただろ?

人の気も知らねェで、美味そうにプカプカ吸いやがって。

特に最近俺の前でばっかやたらと吸いやがるんだよな、なんでかさι

それが原因で俺ん中がニコチンだらけになったらどうしてくれんだっ。

「何だよウソップ。さっきからジロジロ見やがって。もしかして俺に見惚れてたのか?」
「あ、あほかっ!ばか言ってんじゃねェっι」
「あほだ〜?ばかだ〜?てめぇ〜」
「い、いててててっ!鼻をにぎんじゃねぇっ!」

あ、今、サンジの左目がちらりと見えた。

自慢の鼻をサンジに力一杯に握らせながら、一瞬のうちに早まる俺の鼓動。

「サ、サンジ、いい加減離せよιこれ以上やったら鼻がもげる…ι」
「丁度いいじゃねェか、短くなってよっ。誰かさんみたいに」
「…それってもしかして木の人形の事を言ってる訳じゃないよなぁ、サンジ君ι」

サンジは灰が落ちそうになっていた煙草を海に放り投げ、新しい煙草に火を着けた。

「なぁ、ウソップ」
「な、なんだ?」

サンジの奴、俺の目の前に顔を近づけてきやがって、俺は思わず息を止めちまった。

「前髪、切ろうか迷ってんだけど、どう思う?」

勘弁してくれ…、駄目に決まってんだろι

もしそんな事にでもなったら、ほんとにお前の顔まともに見れなくなるからさ…。

「そん時は、ウソップ…お前が切ってくれるか?」

サンジの逸らした顔がうっすら赤く見えたのは気のせいか?

再びポケットから煙草を取り出し、急かされる様に煙が空へと立ち上って行く。

「わ、わかった、まかせろ!器用な俺様がカットしてやるからそれまでしっかり…伸ばしとけっ!」
「おう!」

振り向きざまにさらりと流れる金糸の髪。

見えそうで見えない蒼色の瞳。

おいサンジ…今、俺、上手に嘘をつけてたか?

「ウソップ、そろそろ夕飯の準備するからてめェも手伝え」
「あ、ああ、わかった」

顔いっぱいに作られた銜え煙草のこの笑顔。

ハァ…、人の気も知らねェで…そんな状況、頼むから一生あり得ないでくれっ!

サンジの後ろ姿に懇願しつつ、夕日に照らさた艶やかな頭上に延びる煙の筋を見上げながら、俺はゆっくりと腰を持ち上げた。


[end]


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