odai

□秋模様10のお題〜03 遠くない距離
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わかってねぇ、わかってねぇよ、あいつは全く。
俺がどんな思いで告白したと思ってんだ。
そりゃ、いつも通りでいろとは言ったけど、ありゃねぇんじゃねぇの?

「ウソップ、暇なら夕飯の支度、手伝え」
「ああ、いいぜ」
「ウソップ、皿、並べてくれ」
「わかった」
「ウソップ…、味見するか?」
「……いいのか?サンキュー」

ほらな?
警戒心もへったくれもなくパカッと大口開けやがって。
いつも通りにしてろって俺が言ったんだけどよ、ありゃねぇんじゃねぇの?
普通なら頬を紅く染まらしたり、軽〜く拒否ったり、俺から逃げたりするもんじゃねぇのか?
いつも通り過ぎんだよっ!
ちっとは俺を意識しろっつうんだよ…てかしてくれ…。
…まさか、忘れちまったって事はねぇだろうな?
あの時の事。


わかってねぇ、わかってねぇよ、あいつは全然。
あの後、俺がどうなったと思ってんだ。
「いつも通りでいい」なんて言われたって、んなこと今更出来るわけねぇだろ!

「ウソップ、暇なら夕飯の支度、手伝え」
「え?あ、ああ、いいぜ」
「ウソップ、皿、並べてくれ」
「わ、わかった」
「ウソップ…、味見するか?」
「!?……い、いいのか?サ、サ、サ、サンキュー」

ほらな?
普通あんな事した後に同じ事させるか?
全っ然、俺の気持ち、考えてねぇよ。
いくら「いつも通りでいろ」って言われたって、そんなん無理に決まってんだろっ。
あいつがいつも通り過ぎるから、俺だって無理していつも通りでいるしかねぇじゃねぇか。
本当は、あれからお前の事ばっか考えちまってしょうがねぇのに。
まともに顔も見れなくなったし、声を聞くだけでも心臓がバクバクしちまう。
あいつが何事も無かった様に普通に接してくるから、俺だってそう返すしかねぇじゃねぇか。
…もしかして、あいつにはどうって事ない事だったのか?
あの時の事。


「ウソップ、何作ってるんだ?」
「ん?ちょっとな」

ウソップは朝から男部屋に"ウソップ工場"を運び込み、前から考えてた事をやってやろうと隣で薬の調合をしているチョッパーはもちろん、他のみんなにも内緒で試行錯誤を繰り返していた。

ここ最近、物を作る時はいつもこの部屋か甲板に工場を広げていた。
キッチンでもたまに広げる事があったが、あの事があってからは作るモノを理由にして食事以外は滅多に近寄らないようにしていた。

今取り掛かっている物は、みんなにとって思い出になっているモノ。
チョッパーが仲間に、ビビが仲間であったというそんな思い出を蘇らせる作品。
チョッパーに見せてやりたいって事が一番の理由だが、その後に仲間になったロビンにもという事でもあったのだ。

「ウソップ?完成したのか?」
「い、いや、まだなんだけどな」

立ち上がり掛けたウソップに気付きチョッパーが声を掛けた。
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