odai

□秋模様10のお題〜06 ビターチョコ
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あいつに告白した。
んで、キスもした。

思ってた通りの反応で、大満足の俺。
これからの航海、楽しみで仕方ねぇ…と思ってた。

「おす、サンジ!」
「お、おお」
『え?』
「飯の支度、手伝うか?」
「あ、ああ、頼む」
『ちょっと待て』
「うまそうだな〜」
「あ、味見するか?」
「いいのか?サンキュー」
『おい!ウソップ、そりゃねぇだろ?!』


何なんだよ、あいつの態度。
全く前と変わってねぇじゃねぇか!
そりゃ、俺が「いつも通り」でいろよって言ったからって、いつも通り過ぎんだろ?
俺はお前に告ったんだぜ?
キスもしたんだぜ?俺達。

なのに、なんで全く変化無しだよっ!
お前にとって俺は仲間のまんまなのか?
何も変わんねぇのか?
俺のこの気持ち、伝わってねぇのかよ…。


「ハァ…」

GM号内キッチン。
昼食が済んで、片付けも済んで、おやつに作ったオレンジゼリーを冷蔵庫に入れ、次は夕食の仕込みに取り掛かるまでちょっと一息。
長椅子に腰掛けながらポケットから取り出した煙草に火を着ける。
ゆっくりと吸い込み、時間を掛けて煙を吐く。
その行動を暫く続けていたが、自分でも知らず知らずのうちに深い溜息を幾度となく零していた事に気付いた。

昼食の準備も、片づけもウソップがいつものように手伝ってくれた。
2人の時間、2人きりの時間、嬉しい事は嬉しい。
だが、サンジには物足りなかった。
今日もウソップはいつも通りだった。
片づけが済むと、ウソップはさっさとキッチンを出て行ってしまい、ずっと男部屋に籠もりきりで顔も出さない。
チョッパーといるらしい事は解っていたが、それもこの溜息の原因の一つ。
あの日を境にこのキッチンに"ウソップ工場"を広げる事が無くなってしまっていた。
すぐさま理由を聞けば、
「ここじゃ作りづらいモンだから」と言う。
そんなウソップの言葉を思い出し、再び溜息が零れた。
が、時間は待ってはくれない。
殆ど灰になってしまった煙草を灰皿で捻り消し、気を取り直してキッチンへ向かった。
添え付けの野菜を茹で、手際よく沢山の材料を刻み、長時間掛けて煮込む。
フイに手が止まると、再び頭に浮かぶのは決まった顔。

「あ〜、チクショウ」

行き場のない気持ちが口から飛び出た瞬間、キィとドアが開く音が聞こえた。

「ロビンちゅわ〜んv」

サンジの表情がパァと笑顔に変わり、ロビンの側へと素早く移動する。

「コックさん、コーヒーいただけるかしら?」
「は〜い、かしこまりました。すぐに」

サンジは透かさずコーヒーを煎れるために湯を沸かし始めた。
ロビンは長椅子に腰掛け、頬杖を突きながらクルクルと動くサンジを眺める。

「…静かですね、みんな何やってんでしょうかね?」

サンジはコーヒーをドリップしながら、ロビンに問いかける。

「航海士さんは部屋で海図を書いてるわ。船長さんと剣士さんは昼寝中。船医さんは部屋に籠もりきりだから、薬の調合かしら?」

サンジがロビンの前にコーヒーカップを差し出す。
もちろんカップの隣には小さなお菓子付きで。

「ロビンちゃん、お待たせしました、どうぞ」
「ありがとう、コックさん。あら?チョコレート?」
「大人なロビンちゃんに相応しく、ビターチョコレートですv」

ロビンがカップに口を付けるのを確認すると、ロビンの向かい側に腰を掛ける。
煙草も吸わず、時折りロビンと視線が合うとニコリと微笑んだ。

「どうかした?コックさん」

サンジの態度を前にロビンが不思議そうに聞くと、サンジはロビンから視線を逸らせ口を開いた。

「あいつ…、あいつは何してました?」
「長鼻くん?」
「…ハイ」
「長鼻くんなら、さっきドアの前にいたわ」
「えっ?!」

ロビンの言葉を聞き、サンジは思わず立ち上がりドアを振り返るが、全くの無意味な事だった。

「ごめんなさい、声を掛けたんだけど、行ってしまって。でも、甲板で何やらしているようだったわ」
「………」

サンジはがくりと肩を落とし、再び長椅子に腰を掛け直した。

「長鼻くんと何かあったの?」
「い、いや、そんな、ロビンちゃんにこんな事聞いて貰ったら申し訳ないですよ…」
「じゃ、さっきの様に"独り言"を呟いてみたら?"チクショウ"?」

フフフと微笑むロビンの柔らかな笑顔にほっと肩の力が抜け、サンジも何とか笑顔を返す。
それから暫くの間、サンジの零す呟きだけがキッチンから流れるのだった。


[end]


【春・花びら】へと続きます♪


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