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□春模様10のお題〜01 花びら
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忙しい忙しい。
今日も朝から部屋に籠もって、薬の調合をしてるんだ。
もうすぐ、島が見えて来るというナミの言葉にウキウキワクワクして、その時の為に、薬をいくつか作っておきたかったんだ。
なんで、島に上陸するのに薬がいるのか?って?
だって、何が起こるかわからないんだぞ!
船に乗っているだけなら、仲間同士の喧嘩かウソップが作る小さな怪我程度だけど、あのルフィ達が一度島へ上陸したら、大人しくしていられるわけないだろ?
その時のために今からたくさん薬を作っておきたいんだ。
隣ではさっきまでウソップが"ウソップ工場"の上で何やら楽しそうな物を作っていたんだけど、ちょっと休憩〜と言ったっきり帰って来ないな…、なんて思ってたら上から大声で俺の名前を呼ぶウソップの声が聞こえた。
「おーい、チョッパー!来て見ろよ〜」
「?」
おれはひととおり自分の周りの薬品や出来上がった薬を片づけて、甲板へと上がって行った。
「え?」
辺り一面、ピンク、ピンク、ピンク色。
ちらちらとしたものが、上から下から飛び回っている。
「どぇー、なんだ〜これ〜!?」
「びびったろ?チョッパー。すげえだろ〜?」
ピンク一色の隙間から何とか見えるウソップらしき人影が、ゆっくりとこっちへ向かって歩いてきた。
「どうしたんだよ、ウソップ!これ、どうしたんだよ?!」
「まあまあ、落ち着けよチョッパー。アレを見て見ろ」
ウソップが指をさした方へ顔を向けると、舞い上がるピンク色の渦の中に何やらブーンブーンと音を出している物が見えた。
「あれ、さっき完成したんだ。で、試運転。この間の島で壊れた扇風機を見っけたんだ。扇風機自体はすぐ直せたんだけど、少し前までずっと寒かっただろ?使い道ねぇからちょっと改良したんだ」
その元扇風機だった物をじっくり見てみると、扇風機は筒の底部分にはめてあり、筒の中に花びらの形に切った紙を入れ、ウソップが改良した最速回転の扇風機のスイッチをオンにすると紙の花びらが空へと舞い上がるわけだ。
「すげぇ、すげぇよ、ウソップ!」
「ま、"ホンモノ"には叶わないけど、なかなかイケるだろ?」
おれの思い出。
ドクターとの思い出。
ドラムを出る時に見た、桜の花びらの様にピンク色の雪が舞い散るあの光景。
「うそっぷ〜、ありがと〜」
思わず涙が零れそうになったけど、ウソップの笑顔を見ながら必死で堪えた。
「チョッパー、もう一回やるか?何度でも出来るんだぞ」
ウソップが自分の周りの花びらをかき集めながらおれに聞いてきたから、おれも同じ様に花びらを集めながらウンと頷いた。
「こんなもんでいいかな」
拾い集めた花びらを筒の中に入れ、ウソップが再びスイッチを押そうとしたが、思い立ったようにおれは声を上げた。
「あ、待って、ウソップ。折角キレイなんだからみんなも呼んで来ようよ」
「え?あ、ああ」
ウソップの表情が一瞬、曇った気がしたけど、おれはみんなを呼びにその場を離れた。
ルフィとゾロはもともと船首の方で舞い降りた花びらを体中に付けたまま寝こけていたので揺すぶり起こし、ナミは部屋で読書中だった。
ロビンはサンジとキッチンにいた。サンジにお茶を入れて貰ってたみたいだ。
おれの声掛けにみんなぶつぶつ文句を言いながらも甲板に集まってきた。
「なんだ〜チョッパー。なんか面白いのか?」
「すげぇんだよ、ルフィ。ウソップが作ったんだ」
「何よ〜、もう、早くしなさい」
「何かしら、楽しみね」
「ウソップ、何なんだ?また、くだらねぇもんじゃねぇのか?」
ルフィとナミとサンジが後ろから急かすから、ウソップの手が震えちゃってるよ。
「う、うるせぇιち、ちょっと待ってろ。いいか?」
スイッチ、オン