odai

□秋模様10のお題〜08 僕らのロマンス
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「ウソップ、てめェ、俺の事避けてねェ?」


甲板に広げていたウソップ工場の上で、背中に強烈な威圧感を感じながら恐る恐る振り返る。

ウソップの目の前にはトレイにドリンクを乗せ、如何にも"キレかかってんぜ!"的な表情をしたサンジ。

一瞬サンジと視線が合うが、ここ最近条件反射として身に付いてしまってる素早さで、サッと顔を逸らせる。

「何だそれ…べ、別に避けてねェよι」
「嘘つけ!してんじゃねェかよ今!あからさまにっ」

サンジが睨みを効かせ顔を突き出すが、ウソップは意地でもサンジと視線を合わせず手元の作業に目を向ける。

「てめェ…」

工場の隅にバンッと乱暴に置かれたトレイの音に反応し、そろそろと顔を上げた時にはすでにサンジの姿は無くなっていた。



サンジに対して他の奴らとは別の感情が沸き上がったのは、サンジが仲間になって間もなくだ。

それが恋愛感情なんだと気付くのは、それからまた暫くしてからだったが、一緒に過ごせば過ごしただけ、ルフィやゾロとは違う特別な好意になっていった。


「てめェなんかより、可愛いレディが隣にいてくれたら最高だけどな」
「悪かったな、俺なんかで!」
「まぁ、レディにこんな仕事はさせられねェしな。てめェで我慢してやる」
「手伝ってやってる俺様にそんなセリフ吐いちゃっていいと思ってんのか!」
「そのセリフ、まんま返してやるぜ?今日は"キノコ料理のフルコース"といくか!」
「そ、それだけは勘弁してくれ〜ι」


少しでも一緒にいる時間を持ちたくて、食事の手伝いや片づけにも自ら名乗りを上げた。

夜の見張りの時には必ず好物を差し入れてくれて、それが普段の手伝いのお礼を兼ねてるサンジらしい優しさも、俺はすげェ嬉しかった。

それでも仲間の一人として、気の合う男友達として付き合っていくつもりだった。

それがあの日、いつもの様にナミとロビンへサンジの口から伝った言葉。


「俺からお二人だけへ愛情籠もったスペシャルデザートで〜す♪」
「相変わらずそんなセリフよく口からポンポンと出てくるわねι」
「お二人が微笑んでくれさえいれば俺は幸せですから〜♪」


耳にタコが出来るほど毎日と聞かされていた言葉なのに、何故か突然、胸の奥にズキンと痛みが走った。

その後そんな場面を何度も見掛ける度、いつの間にか無意識に耳まで塞ぐ様になっていた。

そんな事など何も気付かないサンジが俺へ向ける笑顔は相変わらずで、日に日にサンジと目を合わせるのさえ、心苦しくなっていった。
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