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□知らぬが仏、言わぬが花
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俺の職業は保育士。

毎日可愛い子供達に囲まれて楽しく過ごしているここは「むぎわら幼稚園」…ではなく、足元の川には綺麗な水が止めどなく流れ、頭上の小径には散策している人の列が途絶える事なく、見上げた俺の目の前には、時より青空が見え隠れする満開に広がる桜色の木々。


桜満開。


幼稚園が春休みの今、新学期の準備の合間に内々で計画した今日のお花見、夜桜見物。


メインは夜の宴というわけで、俺様はみんなの期待に応え、朝も早くから花見の場所取りという大事な任務を任されているのだ。が、流石に朝からいると、本も読み飽き、音楽も一通り聴き終える。


そしてスケッチブックを忘れた事を後悔しながら目の前を通り過ぎる人間観察に突入するが、暫くすると定番の睡魔が訪れる。


宴の時間はまだまだ遠い。


徐々にに騒ぎ出す腹の虫を誤魔化す為にゴロリと寝転び瞼を閉じた。


「勝負に負けてパシリをやらされてる奴ってのはどこの長っ鼻だ?」
「!?」


ウトウト仕掛けたその時、頭上から聞き覚えのある声が聞こえ、瞑っていた目の前が突如暗くなる。


目を開くと煙草を銜えながら自分を覗き込む、逆さまのサンジの顔があった。


「よっ、場所取りご苦労さん」
「サンジ!?な、なんで?」


ニィッと笑顔を向けるサンジに驚き、ウソップは体を慌てて起こす。


「今夜の花見料理、うちのレストランのスペシャル弁当なんだぜ。何だ、聞いてねぇのかよ」
「聞いてねぇ…ι俺は場所取り頼まれただけだし。でも何でサンジが?まだ夜には早ぇだろ」


時間はまだ夜には程遠いお昼を回った辺り。


「ビビ先生から連絡貰ってよ、腹減っただろ?」


ウソップの目の前にパックに詰めたサンドイッチが現れる。


「おぉ〜サンジ!グッドタイミング!!めちゃめちゃ腹減ってたんだ!」


ウソップはサンジからサンドイッチを受け取ると、手を合わせたと同時にと言って良いほどの勢いでサンドイッチを口いっぱいに頬張った。
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