novel(short)

□STAND
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ハアハアと呼吸をする度、胸ん中がズキズキする。

どこをどう走ったのかさっぱりだったが、うまく街の中心に着いたようで、あいつの気配を探しまくる。

数え切れないほどの店を通り過ぎ、街の外れ近くまで来てしまった。

「いねェ、どこ行きやがった?!」

もう一度引き返そうと後ろを振り返る。

視界の中に微かに映った、薄汚れたオーバーオール、でかいバックにクセの強そうな黒髪、横を向けば長い鼻。

クソッ、あんな所にいやがった!

「おい!ウソッ」
「サンジ!!」

俺が叫ぼうとするのと同時にあいつがこっちへ向かって走り出す。

それも、満面な笑顔で。

見付けたら蹴りの一発でもお見舞いしてやろうと思ったのに、反則だろ?そりゃι

ウソップの言い分はこうだ。

「丁度、卵星に使う卵が切れててよ。スーパーならサンジも必ず行くだろうと思って。 でも、朝イチの良いのはすぐに売り切れるだろ?だから、俺だけでもと思って先に行ってたんだ。ロビンに伝言、聞いたろ?ほら見てみろ、お前の分と2パック買えたぞ。俺様に感謝しろよな〜!」

んじゃ、何か?
俺を今日誘ったのって、卵を買うだけの為かよ!

ウソップから卵を受け取り、近くにあったベンチに腰を掛けた。

ポケットから取り出した煙草に火を着け、フーッと煙を噴き上げた。

ぼーっと突っ立ったままのウソップに声を掛ける。

「ウソップ、他にも行きたいとこあんだろ?俺に構わず行って来い」
「え?」
「俺は特にねェから」

そうなんだ、こいつから誘われた事なんて今までだって一度もねェ。

今までと変わりねェじゃねェか。

しばらくしてウソップがこっちに向き直り、口を開いた。

「んじゃ、改めて俺と見て廻らねェか?」
「……」
「スーパーまで全力疾走してきたから、途中の店、どこも寄ってねェんだよ。面白そうな店もあったしよ、変わった食材売ってるとこもあるみたいだぜ?行ってみねェか?サンジ、約束したろ?」

ウソップの笑顔を前に言葉が出て来ねェ。

その代わり、ぶわっと何かが込み上げてくる。

俺は黙って立ち上がり、煙草を足で揉み消す。

「ウソップ、卵、ありがとな」
「あ、ああ、どういたしまして。そんじゃ、行くか!」

これっぽっちの事がクソたまんねェ…

今は礼を言う事だけで勘弁してやるけど、いつか恥ずかし気も無くてめェを抱き締める約束位しても、バチ当たらねェんじゃねぇの?


[end]


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