novel(event)
□Halloween Halloween
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ここは「むぎわら幼稚園」。
みんなもすでに知っている様に、俺の職場だ。
春から新米保育士としてこの幼稚園に就職して、遠足、運動会はもちろん、親絡みの多い幼稚園ならではの親子給食会やミニ運動会など、この10月までたくさんの行事が行われた。
毎回の行事の構成や準備、子供達を如何にやる気にさせるか、気持ちを盛り上がらせるか、そういう事にも気を払わないといけない大変さがあるものの、子供達との団結、一つ一つの行事をやり遂げた時の達成感は何とも言えない嬉しさと感動がある。
そういう時こそ、保育士になって良かった〜!なんてちょっと涙しちまったり。
俺自身も子供達にすっかり受け入れられ、散々手こずったチビナス君とも最近は上手くやっている。
まあそれもチビナス君の兄貴、サンジのお陰でもあるんだけどな。
今月の最後の行事は月末にある『ハロウィン』。
保育終了後に参加希望者だけ、好きな仮装をして園に集合する。
その時はお決まりの
"Trick or treat"!!
園ではたくさんのお菓子を用意して準備万端だ。
「ウソップ先生、それは何の格好ですか?」
「これか?これは悪魔祓い、魔除けの衣装。包帯巻くだけのミイラ男と迷ったんだけどな」
黒の魔女ハットに黒マント、首にはニンニクをぶら下げ、手には大きな十字架という結構念入りなファッション。
「このジャック・オ・ランタンと一緒に、昨日は徹夜までして用意しちまったぜ」
保育室の入り口に飾ったおばけカボチャに火を灯す。
毎年恒例なもんで、ウソップ以外の先生もなかなか凝った仮装をしている。
かるがも組のビビ先生はお姫様の様なドレス着用。
きつね組のコニス先生は頭に輪っか、背中には羽が付いた天使の仮装。
「なんか二人共、ちょっと派手じゃねぇか?」
「だって毎年の事だからネタも尽きちゃってιおかしいですかね?」
いやいや、お二人共、めちゃめちゃ似合ってます!!
ハロウィンより豪華なダンスパーティーにでも行けちゃいそうだ…なんて妙な妄想をしてる間に、外からびっくりする程の大きな叫び声が響いた。
「とりっくおあとりーと!!せんせい、おかしちょーだい!!」
「お、ナミちゃん、ロビンちゃん、仲良く二人で来たか!」
ウソップが部屋から顔を覗かせると、星形のステッキを持ち、オレンジ色のミニのワンピースを着た魔法使いファッションのナミちゃんと頭にはとんがり帽子、手には小さなほうきを持ち、マントにブーツ、全身紫尽くめのロビンちゃんが並んで立っていた。
「二人共決めてきたな〜!」
「まーね、にあうでしょ?」
「似合う似合う!めちゃめちゃ可愛いぞ!」
「やだせんせい、なあにそのやらしいかお、せくはら〜!」
「あ、あほか!!セクハラって…そんな言葉5歳が使うんじゃねぇよι」
「そんなことより、はやくおかしちょーだい!!」
「……ιあ〜はいはいι」
「くすくす♪」
プリプリとふくれっ面のナミちゃんの横で穏やかな笑顔を見せているロビンちゃん。
全く対照的な性格なのに、この二人は本当に仲良しなんだな〜とウソップは改めて思う。
「せんせい、チビナスくんとゾロはまだ?」
「その二人ならまだ…あ、来た来た!って何だよあいつ…ι」
そこにいた全員がウソップの視線の先に目をやると、向こうの方からひょこひょこと小さな紫色の物体と黒スーツ黒マントで決めた人物が歩いてくる。