novel(event) 

□あわよくば仲間以上恋人未満
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「なーゾロ、誕生日何が欲しい?あ、酒や食い物とかってのは無しだ。ナミに作ってやった武器はお前には必要ないし…。あ、そーだ!前に言ってたよな、刀にダイアル付けてやろうか?ブレスダイアル付けて火を噴く刀ってのはどうだ?嫌か?んじゃ、トーンダイアルにして一振りする事に轟音が鳴る…なんてものそれこそお前にゃ必要ねぇし…。技を繰り出すたびに"お花"の香り〜♪ってのはどうだ?ロビンとの共同製作で」
「何でもいいのか?」
「って聞いちゃいねぇのかよι」


『お前が欲しい』なんて言ったらお前はどうする?


きっと「ぎゃはは!冗談だろ〜」なんて言いながら大笑いするんだろうな。




秋まっただ中。と言っても、ここグランドラインには決まった季節は無い。

今日は11月11日。

麦わら海賊団戦闘員兼力仕事担当、ロロノア・ゾロの誕生日である。

クルーの誕生日の夜は必ず宴を開かなきゃならねぇという船長が勝手に決めた掟があるわけで、クルーの面々はどんな状況に置いても、例え食糧が底を着きそうな時でさえも、宴を開かなくてはいけない。

そうしておかないと、大変な事になるわけで…いや、船長が?大暴れするもんでι

てなわけで、この日も朝からコックはキッチンに入り浸り、他のクルーは会場作り、そして手が空いている者は食材調達として釣りに勤しんでいる。


当の本人はというと、いつもの様に見張り台にて見張り中。

新しい島が見えたり、敵船が近づいて来たりでもすれば、このマンネリと化した仕事にも熱が入るわけだが、そうしょっちゅうそんな事態になる事は無く、ただ青い空に白い雲、限りなく広がる大海原を見ているだけの作業は相当退屈なものなのだ。が、ゾロにとってはそんな事どーでもいい。

暇があれば昼寝をし、目が覚めれば見張りをし、腹が空いたら飯を食い、喉が渇けば酒を飲む。
そして決まった時間にトレーニングをして、それが終わればまた昼寝をする。

こんな繰り返しだ。

だが、こんな彼の惰性的な生活に変化が起きる。

あいつの側で昼寝をし、見張りと見せ掛けてあいつを探し、たまには気分転換と、あいつが工場支部で作業をしている姿を見ながら甲板にてトレーニングをする。


「よおゾロ、最近よく会うよな」
「何言ってんだ?当たりめぇじゃねぇか、同じ船の上なんだから」
「バカ違うって!そういう意味じゃねぇよι」


当たり前だっつーの!
俺は意図的にお前を追いかけているんだから。バカはおめぇの方だ、ウソップ!


それでも、同じ船にいるとはいえ、一日中一緒というわけにはいかない。

フランキーと違ってあいつの興味ある船の整備や修理、自作の武器なんかに関しては俺は全くだし、
チョッパーやルフィなんかと遊び仲間として混じるもの面倒くせぇ。

ましてや、わざわざぐる眉コックとあいつが一緒にいるキッチンへ行って、飯の支度や片づけを手伝う気なんぞ更々ねぇし。


だからこそ、自分のモノにしておきたいってのは自然の原理だろ?


俺がもしあいつに想いを打ち明けたとしても、あいつが俺に好意を持たねぇ限り何もかわらねぇ。

それならまだましだ。

男に告られたなんて気持ち悪いと避けられる可能性だってある。

そんな事になった場合、俺は構わねぇがあいつが構うだろ?
あいつの性格からしたら。

だからっていつまでもこのままじゃ埒あかねぇし…。


「おい」
「……」
「おーいゾロ!聞いてんのかぁ?」
「あぁ?」


何時間海に目を向け、邪な想いに耽っていたのだろうか…ι

声の出所へと視線を向けると、呆れた表情のウソップがこっちを向いて立っていた。
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