novel(event) 

□Much more together  
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ウソップが突然走り出し、サンジがその後を追うように走り去った後、しばらく3人は静かになったその場を離れられずにいた。

「なあゾロ。ウソップ、急にどうしたんだ?」

2人が駆けて行った方向を目で追いながら、チョッパーがゾロに聞く。

「さぁな。奴らの事は奴らで何とかするだろ。気にすんな」

何となくロビンと目が合い、合図を送ったかの様にゾロは歩き始めた。

「行きましょ、船医さん」
「うん」

ゾロのバイト先のコンビニから少し離れたタイムパーキングまで少し歩き、ロビンの車で家へ向かう。

ゾロにとっては家を出て以来のよく見慣れた風景。

運転するロビンと助手席のゾロとの間に顔を出し、久しぶりに3人で過ごす夜にチョッパーの楽しげなおしゃべりは留まるところを知らない。

マンションの駐車場に車を止め、3人はエレベーターへと乗り込む。

ゾロはバックの中の小さな包みから中身を取り出し、改めてチョッパーに礼を言う。

「ありがとな、チョッパー」
「エヘヘ」

久しぶりのずっしりとした手首の重み。

確かに動いている秒針をゾロは見詰めた。

ある日突然、動かなくなったのは数ヶ月前。

時間を知るには携帯電話があるからと、そのままになっていた腕時計。

チョッパーはその時計の秒針音をいつも聞いていた。

ゾロの側に行っては、腕に絡みつき、時計を眺めるのが大好きだった。

『ゾロの時計、格好いいなー、俺も大人になったら欲しいなー』

ある日ゾロの部屋で見付けた腕から外されていた時計。

いつもの様にチョッパーが耳を近づけても、聞こえてこなかった秒針音。

その日ゾロは家に帰って来なかった。

「良かったわね、船医さん」
「うん!」

部屋に入った3人の目の前には、殆どチョッパーが飾り付けをしたらしいキラキラとしたモールや折り紙で作った飾りが部屋中に張り巡らされ、壁には”ゾロ、おたんじょうびおめでとう♪”の文字が大きく書かれたプレート。

テーブルの上には豪華なオードブルと、小振りなバースディケーキ。

「うわっ、ケーキだ!このケーキ、ロビンが買ってきたのか?」

チョッパーは大きな瞳をキラキラさせながら食い入るようにケーキを眺める。

「これは私から剣士さんへのお手製プレゼント」

ロビンの言葉に表情を固まらせるゾロとチョッパー。

「ええっ!?」
「…これ、お前が作ったのか?」
「あら?この位私にも出来るわ」
「「……ι」」

2人の何とも言えぬ表情を前にロビンがクスクスと笑い、その顔を眺めながらゾロは顔を少し赤らめ、胸いっぱいに込み上げる嬉しさにチョッパーが笑顔を零す。

血の繋がりも何もない形だけの家族。

再び動き出したゾロの腕時計。

久しぶりに響き渡る3人の笑い声。

再びこんな生活がやってくるのは、もう少し先の話…。

[end]

→あとがき
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