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□決戦は誕生日〜battle 1
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「おい」
「グスッ」
「おい、ウソップ!」
「!?」
「え?何、お前泣いてんの?」

被っていた毛布越しに聞こえた声、選りにも選って何でサンジだよ…ι

「ウソップ、何かあったのか?」
「……ι」

サンジはいつまでもウソップから返答が返ってこない事に焦れったくなり、毛布を掴んでいるウソップの手を払い、毛布を無理矢理引き剥がす。

「や、やめろっサンジ!」
「やっぱり泣いてんじゃねぇか、ちゃんと顔見せろ!!」

毛布をサンジの手から引き返そうとウソップも立ち上がり、サンジに詰め寄る。

サンジも負けじと引き戻そうとするが、月明かりの中に浮かぶウソップの潤んだ目に視線が止まり、思わず動揺して毛布を引く手の力を抜いてしまった。

途端、勢いよく離された毛布と共にウソップは体制を崩し、見張り台の手摺りから体ごと乗り越えそうになった。

「ギャーッ!!お、落ちるぅぅぅぅ!!!」
「ば、バカ!何やってんだ、危ねェだろ!!」

暗闇の中、ハラハラと甲板へと落ちていく毛布を二人して見送りながら、血の気が引いていくのと裏腹に、お互いに自分の体に密着している腕の強さと体の温もりに意識が戻される。

息を飲み、互いに顔を見合わせると、目の前の瞳に映る自分の姿。

「うわっ、と…サ、サンジ…は、離せよ///ι」

今にも破裂しそうなほどの心臓の高鳴りをサンジに気付かれ無い様に、ウソップは慌ててサンジを押しのける。

そして、まだ乾ききっていない涙を素早く拭い、サンジから顔を背ける。

「ウソップ、大丈夫か?」
「え?…な、何が?」
「お前、何泣いてたんだよ」
「な、泣いてねェよ!」
「うそつけ、泣いてたじゃねェか」
「泣いてねぇって言ってんだろうが!…そ、それよりここに何しに来たんだよι」
「何って…てめぇがいつまでも取りに来ねぇから、俺がわざわざ持って来てやったんだろうが」

サンジが指を差す方向を見ると、トレーに乗った夜食が置いてあった。

見るからに美味そうに湯気が立ち登っている。

「腹減ってんだろ?」

いつの間に取り出したのか、サンジの口には煙草が銜えられ、紫煙が夜空へと高く上がっている。

サンジの優しい口調に誘われ、逸らしていた視線をゆっくりとサンジへと向けるが、思い出されるのはキッチンでのサンジの言葉。

「…夜食、サンキュ」
「おう、冷めないうちに食えよ。でもよ、さっきはほんと危なかったよな!流石の俺も」
「サ、サンジ!!用がねぇなら…もう行ってくんねぇか?」

ウソップは再び込み上げてきた涙をどうにか塞き止め、サンジに冷たく言い放つ。

いつもなら罵声と共に、蹴りの一つや二つでも飛んできそうな所なのに、蹴りどころかサンジの息使いさえ感じ取れなくなった。

「そうかよ、邪魔して悪かった。…てめえの言葉が1番に欲しかったからよ」
「え?…… あ!!」

ウソップが呼び止めようと即座に顔を上げるが、すでにそこにはサンジの姿は無く、仄かに煙草の香りだけがその場に残されていた。


「今日、サンジの誕生日じゃねぇか…ι」


ウソップは頭を抱え、溜め息を吐きながらその場にしゃがみ込む。

今日一日サンジの言葉に右往左往させられっぱなしだ。

「はぁ〜、俺、これからどうすりゃいいんだよ…ι」

半端な気持ちのまま口にするには何となく申し訳無くて、サンジの置いて行ってくれた夜食になかなか手を出すことが出来なかった。


続く…


NEXT☆battle 2


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