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□決戦は誕生日〜battle 2
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「ん?」
「目、覚めたか?」

その声に一気に目が覚め、気配がする方に顔を向けると、テーブルの向かい側で煙草を吹かしながらサンジが座っていた。

「あ、あれ?みんなは?」

自分の周りを見回すと、パーティーの後の余韻は何となく残っていたが、他のクルー達の姿は無い。

「ナミさんとロビンちゃんはもう休んだ。ルフィとチョッパーは酔いつぶれて部屋で爆睡。ゾロは見張り台」

酔いが未だ残っている事と半分まだ寝ぼけている状態でどうにか頭の中を整理する。

「という事は、ここに居るのは俺と…」
「俺だけだ」

目の前にいたサンジがウソップ目掛けてフッーっと煙を吹き付ける。

「ゲホゲホゲホ・・・な、何すんだよ、サンジ!」

ウソップは素早く立ち上がり、サンジに向かって睨みを効かしたが、サンジは動じもせず、変わらず煙草をプカプカと吹かしている。

そんなサンジの態度に拍子抜けしたのか、力んでいた肩を落としドアの方へ足を向ける。

「俺も寝よ…」

ウソップがそう呟きドアに向かって歩き始めると、突然サンジが立ち上がり、ウソップの肩を掴んだ。

「な、何!?」

一瞬にしてウソップの顔が紅潮すると、サンジは咄嗟に掴んでいた手を放し、ギロリとした横目でウソップに聞く。

「ウソップ、何か俺に言う事あるだろ?」
「え?」
「……」
「…あ、もしかして昨日の事か?」
「昨日の事?」
「昨日はあんな追い払う様な事言って悪かったよ…、ちょっとイライラしててさ。お前だってあるだろ?そういう時」
「ハァ?何言ってんだ、んな事じゃねェよ」
「え?違うのか?じゃあ何だよι…わかんねぇ」

サンジはテーブルの上にあった灰皿に銜えていた煙草を捻り込む。

その間ウソップは何の事だか考えながらサンジの動きを眺めていたが、どうにも思いつかない。

「早くしねぇと越しちまうだろ!」
「へ?越すって?…………あ!!」

ウソップは漸く気付く。

「そ、そっか、そうだよな!俺、まだ面と向かっては言って無かったんだよな…ゴホンッ…お誕生日オメデトウゴザイマス、サンジ君!」
「ったく、気付くのが遅っせェんだよ!」

自分の言葉に何気に照れているサンジを目の前にして、次第に早く、強くなっていく心臓の音。

再び煙草を取り出し火を点けるサンジの仕草を眺めながら、ウソップは自分の想いを再確認してしまう。


やっぱり俺、サンジが好きだ。


サンジがナミを好きでも、俺の気持ちは変えられねェ。

でもナミを裏切る事はしたくねェ…

昨日はあんな場面を目の当たりにして、勝手に動揺して、勝手に怒って、八つ当たりしちまった。

サンジを好きなのは自分で、サンジやナミには関係無い事だ。

今日のこの日はサンジにとってはめでたい日以外何物でも無いんだから。

ウソップは自分にそう言い聞かせながら、必死でサンジに笑顔を向ける。

「んじゃサンジ、俺そろそろ行くな」
「あぁ?」
「美味かったぜ、ご馳走もケーキも。やっぱり今度はサンジの誕生日には俺達が準備する事にしようぜ!
めでたい本人が準備するなんておかしいだろ?」

笑いながら手を振り歩き出すウソップに、サンジは慌てた様に呼び止める。

「おいウソップ!めでたい俺に対してまだ何かあるんじゃねぇのかよ!」
「は?何かって何だよι」
「プレゼント…あるんだろ?」

サンジの口から出た言葉に一瞬硬直して、カァっと体温が急上昇するやいなや、ズササササーッと一気にドアまで後ずさる。

「な、な、なんでそれを?!ってか、ぷ、プレゼントなんてねェよ!!」
「嘘つけ、なんかあるんだろ?」
「う、嘘じゃねぇ!そんなもん用意してねぇし!」
「そんじゃ、誰へのマフラーだよ」

何でそこまでバレてんだよιι

ウソップはガクリと肩を落とし、仕方無くバックからくしゃくしゃになってしまっている紙袋を取り出した。

が、なかなかサンジに手渡そうとしない。

「サンジ、確認してぇんだけど、お前…ナミが好きなんだよな?」
「は?何言ってんだ今更…当たり前の事聞くんじゃねぇよ」
「だ、だよな!やっぱそうだよな!…ならこれはやらねぇ」
「な〜にをごちゃごちゃと…いいから寄越せ!」

ウソップは手に持っていた紙袋をカバンへ戻そうとするが、寸前でサンジに手を捕まれ強引に紙袋を取り上げられてしまった。

「ギャー!か、返せ!!」

サンジは必死に手を伸ばしてくるウソップを気にも止めず、紙袋から中身を取り出す。
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