novel(event)
□決戦は誕生日〜battle 3
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「それじゃみんな、夜には船に戻って来てよ」
「「「おう!」」」
各自それぞれコートを着込んで次々に下船して行く。
船に残ると言ったゾロだが、ナミはその希望を悉く却下し、ルフィに付いて行く様に指示され、渋々他のクルーと船を下りた。
「それじゃウソップ、夜まで留守番頼むわね」
「おう、まかせとけ!!とは言うものの俺も行きてェ〜!」
久しぶりの雪に心浮かれ、ルフィ、チョッパーと共に一番に飛んで行きたいのは山々だったが、勝負に負けてしまったのなら仕方ない。(ジャンケンだけど)
となれば、一人きりの留守番をいかに楽しく過ごすかなんて、ウソップにはお手の物。
一人甲板で雪の上を転がり回り、お得意の雪像を作り、甲板全てに足跡が残る程に遊び捲った。
腹の虫の合図が鳴り、お腹の空きを満たしにと、冷え切った体を溶かす為にキッチンへ向かう。
お湯を沸かし、ココアを煎れ、サンジの作っておいてくれた昼食を取る。
視線は目の前にあるキッチン。
口を無造作に動かしながら自然と考えてしまう、サンジの事。
あれ以来気まずくて、出来れば顔を合わすのも避けたかったが、他の奴らに気付かれたくなくて、自分としては必死にサンジに対していつも通りに接してきたつもりだ。
サンジからも特に変わった行動をしてくる訳でもなく…やっぱりあいつにとっては軽いジョークだったんだと必死に自分に言い聞かせた。
みんなにバレてねぇか?
肝心なサンジ本人にも、気にしてねぇ素振りが出来てたか?
と、突然あんな事されて普通でいる方が無理に決まってんじゃねぇか…ι
そりゃそうだろ?
キスされたんだぞ、あいつに!
いや、別にサンジが嫌だってわけじゃねぇんだ…だって俺はあいつが好きなんだし。
って、そうじゃなくて…好きなんだけど、彼女がいるくせに!キスしてきたんだ、無理矢理。
俺の気持ちも知らねぇで、何のつもりなのか全くわからねぇし…ι
キスされてラッキー☆なんて、素直に喜べるかっ!!
あれから何事も無く約一ヶ月が過ぎた。
てか、なるべくサンジから遠ざかってたんだけどな。
このままどうにかあいつの事を諦めて、これから先も仲間のままでいるしか道はねェ。
一ヶ月の間に、少しでもサンジへの想いが鎮火するだろうと思っていたのに、俺の気持ちは変化するどころか前以上にあいつの事が気になって仕方なくて…。
単にナミとの事を知っただけなら時間が経てば諦めもついたはずなのに、あいつが俺にあんな事しやがったから、もう自分でもどうしたらいいのかわかんねぇんだ。
あの後も、サンジとナミが俺達の前で、恋人同士の様に振る舞う事は無かったけど、夜な夜な2人きりで過ごす時間は相変わらずだった。
「だ〜〜もうやめやめ!うだうだ考えんじゃねぇ!どこまで諦め悪ぃんだよ!それより続きだ、続き♪あいつら帰ってきたら大喜びすんぞ〜!!」
ウソップは再び甲板に飛び出る。
さっきまで必死に作っていた雪山。
後は慎重に大きな穴を開け、出入り口を作るのみ。
寒さの中、鼻や手や頬を真っ赤にしながら慎重にシャベルで雪を掻き出していく。
「こんなもんかな?おぉ〜〜!完成だ〜〜!!」
シャベルを放り投げ、両拳を上に高々と挙げる。
「へぇ、漸く出来上がったな、かまくら」
「買qィ!」
突然耳元で話しかけられ、誰かの熱い息が悴んだ耳にビリッと響く。
「な、サンジ!?お前ずっと見てたのか?いつの間に帰って来てたんだよι」
「少し前。お前夢中んなってて全く俺に気付かねぇし、だから出来上がるまで待ってた」
「そ、それでも普通声くらい掛けるだろ…ι」
サンジに気付かれない様に少しずつ遠ざかりながら、高鳴り出した鼓動をどうにか落ち着かせようとする。
「これ完成だろ?中に入ってみねェの?」
「え、ああ、入ってもいいぞ」
そう言い立ち尽くしたままのウソップを横目に、サンジがかまくらに近づく。
「ほら、まずは制作者の第一歩だろ!」
サンジはウソップの腕を取り、強引に中へと押し込んだ。