novel(event) 

□Fragrance of summer
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「おいっ、食い物をそんなとこに並べるんじゃねぇ!」
「あり?違ったか?わりぃわりぃ」
「おい!それ勝手に触んじゃねぇよっ!」
「お前らばっかずりぃ〜、俺にもやらせろっ」
「それよりてめぇ、いい加減、レジ覚えろよ…」
「それ面倒くさそうなんだよな〜、やりたくねぇ」
「「何しに来てんだよ、てめぇは!!」」

青空眩しい新緑輝く五月。

GWがあっという間に過ぎ、ウソップやゾロの日常生活も平常に戻った学校帰りのコンビニのバイト。

たま〜に顔を出す気のいい店長と顔見知りな仲間達と、長年続けている普段なら楽しい時間なのだが、ここ最近は誰かさんのお陰で二人は共に疲労困憊モードである。

その根源とは、
「ルフィ!いいからてめぇは外でゴミの分別でもしてこい!」
「ゴミ〜?面倒くせぇな〜」
「ごちゃごちゃ言ってねぇで、とっととやれっ!」

ウソップの隣で今にも血管がぶち切れそうなゾロがフーフー唸りを上げている。

ここまでゾロを切れさせられる奴なんて、ルフィ位なものだ。

ウソップと違い、つい最近顔を会わせるようになったばかりのゾロには、余計に気苦労が耐えないだろう。

「おい、ウソップ…、お前よくあんなのと付き合ってられるな、昔からの付き合いなんだろ?」

そんな事聞かれるのも初めてだし、自分で考えたこともないウソップにはおかしな質問だった。

「ん〜、んなこと考えた事ねぇからなぁ… 普段はあんなんでも付き合ってみると良い奴だぜ?」
「…別に悪いって言ってるわけじゃねぇけどよ」
「ふ〜ん」

店の外で相変わらずバタバタと作業しているルフィをゾロは一瞥すると、再び自分の仕事に向かい始めた。

ルフィがバイトを初めてから漸く一週間。

これほどまでに仕事が板に付かない奴も珍しい。

バイト歴の長いゾロとウソップには迷惑な話だが、あの脳天気店長が決めたことなら仕方がない。

「ルフィ、でもなんだって今頃バイトなんだよ…、仮にも受験生だろ?」
「何言ってんだウソップ、お前だって同じだろ?」
「お、俺はいいんだ!生活が掛かってんだからよぉ」

そう。
二人は今年、大学受験のはずだ。

ウソップはともかく、ああ見えて良い家柄のルフィは大学に進学しないわけがない。

兄のエースもついこの間アメリカ留学し、コミュニティーカレッジに通っている。

「どうしても金がいんだよ」
「金って…、バイトなんかしなくたって小遣もらってんだろ?」
「だってよ〜、ナミがそれは俺の金じゃねぇって言うからさぁ」

ルフィの口から出た名前を聞けば、ウソップもゾロも充分に頷ける。

ナミはウソップ、ゾロと少し前までバイト仲間だった。

顔なじみの気の良い店長が、あのルフィを雇った理由もはっきりする。

「誕生日のプレゼントかなんかか?」
「すげえなウソップ、よく解ったな〜!」
「あいつが何でこんな時期にお前にバイトをさせたのかなんて、少し考えりゃ解るぞ」

ウソップの隣で同様にゾロも頷く。

プレゼントとは、本来心が籠もっていれば金額、価値なんぞ関係ないハズ。

手作りだって充分相手は満足してくれるだろう。

しかし、相手がナミじゃ仕方ない。

プレゼントするなら、物である、価値である…。

ナミを良く知るウソップとゾロは、今回ばかりはルフィに深く同情せざるを得ない。

がしかし、そのルフィの事情とバイトの事情は全くの別だ!

「ルフィ!勝手に肉まん食うんじゃねぇっ!」
「だってよ〜、腹減っちまってぇ、金払えばいいだろ?」
「アホ!!そういう問題じゃねぇんだよ!」
「まあまあゾロ、ルフィはこういう奴だからさ…」
「ウソップ!お前が甘やかせてっから、図に乗るんだろうがっ!」

期間限定短期バイトといえども二人には先は長く遠い。

ゾロにしこたま怒鳴られ、意気消沈しながらも肉まんを頬張る相変わらずの脳天気を前に、深い溜め息を漏らすウソップだった。
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