novel(event) 

□Fragrance of summer
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「サンジ君じゃない?久しぶりね〜」

夕方、ウソップのバイト先のコンビニまでの道、煙草を吹かしながら歩くサンジの後ろから掛かる可愛らしい声。

後ろを振り向かなくとも良く知る声に目がハートに変わる。

「ナミさ〜ん♪どうしたの〜?こんなところで」

擦り寄ってくるサンジを手慣れた様にかわし、反対にナミはサンジにニヤリとした視線を送る。

「サンジ君こそ何処行くのよ〜なんて、聞くまでもないわね」
「は、はは…」
「それより学校はどう?真面目に通ってんでしょ?」
「ま、まぁね」

サンジは高校を卒業後、大学へは進学せず、調理師専門学校に通っている。

もちろん引き続き「バラティエ」での修行をしながらだ。

今日はお店の定休日という事もあり、ウソップに夕食を作ってやろうといつもより早い時間にウソップのバイト先に向かっていたというわけだ。

「お、俺の事はいいですよ… それよりナミさん何処に行くんですか?」
「ちょっとね〜、偵察♪」
「て、偵察?」

サンジの腑に落ちない表情を見てナミはクスリと笑うと、軽い足取りで歩き出した。

「ん?ナミさん、今ウソップの声が聞こえなかった?」
「や〜だサンジ君、ウソップの事ばっかり考え過ぎよっ」
「ち、違うって!マジですよ、マジ!」
「あっ、本当だわ…、あれウソップよね?」

店も目前に迫った頃、その方角から何やら大声で叫ぶ声が聞こえる。

サンジとナミが目を凝らすと、縦に並んだ二つ姿がもの凄い勢いでこっちへ向かって走ってくるのが見えた。

「サンジ!!そ、そいつ、捕まえてくれ〜っ!」
「あぁ?何だって?」
「サンジ君っ!」

ウソップが叫んだ直後、追い掛けられている奴の足に何やら絡まった様で、つまずきよろけた所をサンジが瞬時に迫り寄る。
が、それでもなお振り切り逃げようと暴れる男の鳩尾に、サンジの蹴りが見事に入った。

「どした?ゾロ」

もうすぐ、バイト時間も終わりに近くなった頃、ゾロが長い間同じ方向を見詰めたまま静止していることにウソップは気付く。

ゾロの視線の先を見ると、男が二人、なにやらこそこそと怪しげな動き。

一人はこちらに背を向け、もう一人はその男に視線を遮られていてよく見えない。

「ウソップ、あいつらやる気だぞ」
「や、や、やるって何を!?」

そういえば、ここ最近、この辺りのコンビニ数軒がかなりの万引き被害が出ているらしいと店長から聞いていた事をウソップは思い出す。

警察も頻繁に見回りをしているものの、万引きはなかなか減少しない軽犯罪だ。

「ウソップ…、あの男が店を出たら一気に行くぞ!わかったか?」
「え?な、何すんだ?!ゾロッ!」

一瞬ニヤリとしたゾロの表情を目にし、ウソップの鼓動は一気に加速する。

男達が揃ってこちらを一瞥し、ドアチャイムを鳴らし、店外へと出ようと足を踏み出した瞬間、

「お前ら!ちょっと待て!」

ゾロが素早くカウンターを飛び越えた。

ゾロの声を聞き、足を止めるどころか急ぐように走り出した二人に向かってゾロも走り出す。

が、いつの間にか本売り場にいたはずの大男がゾロの目の前に立ちはだかった。

「くそっ、てめぇもか!」

二人の万引き犯を目前に足止めさせられ怒り沸騰中のゾロに、その男が殴りかかる。

ゾロはヒラリと身をかわし、素早くレジ横に置いてあるハンガーから何やら掴み取る。

「ウソップ!あいつらは任せたぜっ!」
「へ?」
「早く行け!逃げられちまうぞ!」

ウソップは体を強張らせながらも、ゾロの声に反応し、重たい足をどうにか持ち上げ走り出す。

ドアが再び開き、ウソップが飛び出す瞬間、ゾロの目の前にいた大男も外へと逃げ出そうとするが、さっきとは反対に今度はゾロが男の前に立ちふさがる。
それも、手にはビニール傘を構えて。

「てめぇ、俺から逃げられると思ってんのか?」
「うるせぇ!この野郎っ!!」

バシーン!!

店内に残っていた他の客の視線を一斉に集め、ゾロの目の前にドサリと大男の体が崩れ落ちた。
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