novel(event) 

□春の日に
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「なぁ、お前のその鼻本物?」
「はぁ?」
「おんもしれェな〜お前」
「この鼻だけで俺を判断しやがるお前がどうだよっ!」


ウソップ13歳。
中学校入学を目の前にした春休み。
初めての学校、初めての制服、新しい友達。

大人への階段を一歩踏み出すとも言える、中学入学を目前に控えたいつもより長目の春休みのある日、小学校から連んでいる友人数人と中学校内の偵察に行こうという事になった。

取りあえず通い慣れた小学校前で待ち合わせ、中学校までの道のりを、自転車数台横並びにかっ飛ばす。

ウソップの通う予定の中学校は、近くにある2つの小学校が合併する。

その為、顔見知りもたくさんいるが、初め会う奴らも多い。

こういう好奇心に人一倍胸を膨らますウソップとは裏腹に、周りの友達の中には、相手の小学校に敵対心を持つ奴ももちろんいる。

「向こうの奴らってとにかく弱いだって」
「頭悪い奴が多いとかって聞いたぞ」
「不細工な女子だらけらしいぜ」
「俺なんか給食が不味いって聞いた!」

そんなくだらない噂で大いに盛り上がるが、向こうの学校でも同じ様に自分達が噂されているなどとはこれっぽっちも思わない。

まだまだ幼い少年達である。

「着いたぞ」
「どうする?ホントに中に入ってみる?」
「やっぱヤバくねェ?見つかったら怒られるだろ?」
「そりゃ見つかれば怒られるけど…見つからなきゃいいじゃん!」

その言葉に全員納得してなるべく見つからないよ〜に、潜入を試みる事になった。

校庭ではいくつかの運動部が埃まみれになりながら、賑やかに活動している。

それとは対照的に、ウソップ達はそろりそろりと静まりかえっている校舎へと近づく。

「ここ、鍵開いてるぜ!」

ウソップ達は未知なる世界へ足を踏み入れた。

「な〜んにもねェな」
「別段俺らの学校と変わりねェじゃん」
「おお!机と椅子がでけェ!」
「教室ん中、漢字だらけだぜι読めねェ〜」

静まり返っているいくつかの教室を素通りしたが、どの教室も特別変わりないので取りあえず目の前の部屋に入ってみた。

教室の中をそれぞれに物色する。

黒板に至っては、お決まりの落書き。

ウソップは昨日テレビで観た映画の恐竜の絵を、スラスラとチョークで描いていく。

「さすがウソップ、上手いな〜」
「へへっ、まぁな」
「この肉なんかサイコー!」

とその時、バタバタと騒々しくいくつかの足音がウソップ達の耳に飛び込んで来た。

「な、何だ?!」
「やべェ!誰かこっち来るぜ!」
「か、隠れろっι!」

ウソップ達は一斉に机の下に潜り込み息を潜めた。

『頼む!通り過ぎてくれ!!』

騒々しい足音に神経全てを集中させながら、全員の意識が一つになる。

「ここに隠れようぜ!!」

『ひぃぃぃぃぃ〜ι』

ウソップ達のいる教室のドアが勢いよく開かれ、ガタガタバタバタと騒々しく音が鳴り響いたが、一瞬にして教室内はシーンと静まりかえる。

青冷め、頭を抱えて縮こまるウソップの隣に、一人の少年が潜り込んできた。

「ギャー、ななな何だよお前〜ι!!」
「シーーーーー、黙ってろ!!」

「チッ!何処に行ったんだ?あのガキども」

舌打ちした先生らしき声を残し、再び静寂が戻り、足音さえも漸く消えた。

「ひ〜〜やばかった…良かったな〜見っかんなくて!」
「本当だぜ…ι俺様の貴重な寿命がまた縮まるかと…って、お前誰だ〜!!ここで何してんだよι!」

その場に立ち上がったウソップの前に、ニカッと笑顔を向ける左目の下に傷のある黒髪の少年。

学校では見たことの無い顔だ。

「何って、"秘密基地の探検"だ!お前は?」
「え?え〜と、"未知なる世界の偵察"…ι」
「ふ〜ん」

そう言いながら黒髪の少年は引き寄せられる様に黒板へと近付く。

「なぁこれ、お前が描いたのか?」
「え?あ、ああ」

他の場所に隠れていた少年達も漸く顔を出し、ウソップと黒髪の少年を取り囲む様に集まって来た。

「すげェだろ?ウソップは絵が上手いんだ。何でも描けちゃうんだぜ」
「何でも?へェ〜」

全員が食い入る様に黒板に描かれた恐竜の絵とウソップの顔を交互に見詰める。
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