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□がんばる保育士さん!弐の巻
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「さてと」

ウソップは自分の席に着き、気を取り直して皿に目を向ける。

一見、普通のカレーライスと変わり無い。

スプーンにひと掬い取り、カレーを口に運ぶ。

「う、うめぇ〜!!!」

ウソップの歓喜の声に子供達も母親達も一斉にウソップの方へ顔を向ける。

「何だ?このカレー!何が入ってんだよ?!」

ほっぺたが落ちるっていう言葉はこんな時にこそ使うのだろう…。

ウソップはそんな事を思いながら、お皿にあるカレーをガツガツと口に掻き込む。

満足感に浸りながら顔を上げると、教室中の視線がすべてウソップに向けられていた。

「へ?」
「ウソップせんせ〜、カレーたべたことないの〜?」
「せんせぇ、おおげさ〜!」

子供達の声とお母さん達の笑い声で、教室内が益々賑やかになった。

「んなわけねぇだろっ!でも、こんなうまいカレーは初めてだ」

ウソップの大袈裟とも言える様な言葉に笑いながらも、子供達も大人達も改めてカレーの美味しさを確かめる。

「ほんとだ〜、やっぱりおいしいね〜!」
「せんせいがいうからよけいにおいしいよね♪」

再びカレーを食べ始めた子供達を見回していると、自分を見詰めているチビナスの兄の視線に気づく。

途端、ぶわっと恥ずかしさが込み上げてきて、ウソップは不自然に目を逸らしてしまった。

その後、ウソップは一度も顔を上げられないまま、カレーライスと共に添えられていたオレンジゼリーを俯きながらも満足に平らげ、
この日の給食会は無事終了した。


「あ、あのぅ…」
「あぁ?」
「き、今日はご馳走様でした。
!すごい美味かったです!!」

保育時間が終わっても園庭で遊びたくて帰りきらない子供達を母親達が微笑ましく見詰める中、チビナスの兄も園庭の隅の方で一人佇んでいた。

「あ、改めて初めまして。俺、いや、私、今度チビナス君の担任になったウソップです。1年間宜しくお願いします」

ウソップは視線だけ自分へ送るチビナスの兄に丁寧に頭を下げる。

「あのよ…」
「はい?」
「そんなに美味かったか?」

チビナス兄の言葉にウソップは一瞬戸惑ったが、すぐにさっきの給食会の事だと思い付く。

「あ、ああ、いや、は、はい!めちゃくちゃうまかっ、お、美味しかったです!!」

再びさっき食べたカレーの味が思い出され、自然に溢れる笑いをチビナス兄に向ける。

そして、ウソップは前から気に掛かっていた事を口に出してみた。

「あの、お兄さん…、お仕事忙しいんでしょうか?チビナス君のお迎え、お兄さんが来るってのはやっぱり無理ですかね?」

チビナス兄は何も答えない。

「それぞれのお家の事情も有りますし、無理なら仕方無いんですけど…」

ウソップはチビナスを目で追う兄を暫く見ていたが、それ以上何も言う事も出来ず、気まずい雰囲気から逃げるように、そそくさと子供達のいる方へ足を踏み出そうとした。

「来て欲しいか?」
「へ?」
「来て欲しいんだろ?俺に」
「え?ああ、はい…」

ウソップはチビナス兄の言葉に何となく違和感を感じたが、とりあえず頷く。

「来てやるよ」
「ほ、ほんとか?あ、いや、本当ですか?」

ウソップが再びチビナス兄に近づこうとするが、そうするまでもなく兄がウソップへと近付いて来る。

「おい」
「はい?」
「あのよ…、さっきっからうぜぇんだよ、その言葉使い。それに、"お兄さん"って呼ぶんじゃねぇ」
「は?で、でもι」
「でももクソもねぇ。俺はサンジ。今度俺にそんな風に話しやがったら、もう飯作りに来てやんねぇぞ」
「そ、それは困ります!じゃなくて、えっとι」
「わかったな、長っ鼻!」
「狽ネ、長っ鼻言うなっ!!」

思わずサンジに突っ込みを入れてしまい、ハッと我に返るウソップだったが、怒るどころかサンジは特徴ある眉をクイと持ち上げ、ニヤリと笑顔を向ける。

今まで一度も見る事の無かったサンジの表情。

ウソップは思わず息を呑み、慌てて視線を逸らそうとしたのと同時に、後ろから思い切り激痛を伴う衝撃がっ。

「い、痛ぇーっ!!」

ビリビリと痺れる部分を押さえながら勢いよく振り返ると、チビナスがサンジにも負けないほどの睨みを効かせて立っていた。

「チ、チビナス君っ?!」
「おい、こらてめぇ、何してやがんだっ!」

チビナスと同じ鋭い目つきで、サンジがチビナスの首根っこを掴んだ。

「うるせぇ、ぐるまゆ!おまえ、かえれ!」
「あぁ?!てめぇ、誰に向かってそんな口聞いてんだ?」

サンジは逃げだそうと暴れ出すチビナスを羽交い締めにし、左の頬をギュっと摘む。

「いてぇ!はなせっ!」

今度はチビナスがサンジの脛に強烈な一撃を入れる。

「こんの、クソナスっ!」

同じ姿形をした暴れる大小を目の前にして、戸惑うウソップに構うこともなく、眼の飛ばし合いは止まらない。

「お、おい、チビナスくん…サ、サンジ…さんιι」
「「あぁ?!」」

2つの鋭い視線が同時にウソップに向けられ、一瞬にしてウソップの体が石と化する。

「てめぇ、"さん"付けすんなっつったろーがっ!!」
「うるせぇ、ながっぱな!!」
「ひぃぃιはい!スミマセン…ι」

ウソップは二人の凄味ある喝に小さく固まりながら、少しだけ今の仕事を選択した事に後悔を抱くのだった。


To be continued…


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