novel(event)
□がんばる保育士さん!参の巻
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「よっ」
「あ、サンジ、この間はありがとな。子供達もやっとやる気になってくれてほんとに助かったぜ」
「ふ〜ん、そりゃ良かった」
ウソップは親子給食会以来、チビナスの迎えに毎日来るようになったサンジと最近では顔を合わせれば言葉を交わすようになっていた。
「サンジ、今日仕事は?」
「他の奴に代わってもらった」
「けりいれておどした!」
二人の間に割り込む様にボソリとチビナスが呟いた。
「うるせぇ、クソナスっ!!」
「ば〜か、なにムキになってんだよっ、ベー!」
サンジが即座に蹴りを繰り出すが、慣れているのかチビナスは上手に擦り抜ける。
「お、おいサンジ、子供相手にムキんなるなよι」
「おい、ながっぱな!おまえ、おれたちのあし、ひっぱんなよなっ!」
「何だと〜!!」
大笑いしながら走り出すチビナスを子供相手とも思えない勢いで追いかけるウソップ。
サンジは二人の後ろ姿を追いかけるように賑やかさが増した園庭へと歩き出す。
燦々と輝く太陽と真っ青な空。
「クソ眩しいな…」
賑やかな音楽と共に、年中3クラス対抗ミニ運動会がスタートする。
運動会の種目は全部で5種目。
まずは定番中の定番「かけっこ」に「親子大縄跳び」、「障害物競走」に「玉運び競争」そして、毎年最後の目玉、「みんな一緒にゴールイン!リレー」。
ウソップのクラスひつじ組の子供達みんな、お菓子の為とはいえ前日のやる気の無さとは打って変わってとても頑張った。
その中でも特に活躍したのはやはりこの4人。
「かけっこ」はもちろん、チビナス君だ。
いつもウソップを大いに悩ませてくれている素早さ、脚力で文句無し、断トツの1位獲得。
「大縄跳び」では、いつもリーダーシップを取ってくれているナミちゃんがここでも力を発揮。
「みんな〜、がんばってよ〜!ごほうびがかかってるんだからね〜!!おかあさんたちも、てをぬいたらしょうちしないんだから!!!」
結果はまずまずだった。
お母さん達にまで脅しをかけるとは…さすがナミちゃんだι
そして、「障害物競走」。
速かった…、ゾロ君が。
園内でしょっちゅう迷子になったり、昼寝ばかりしてるくせに、
力業だけは誰にも負けない。
網を素早くくぐり、平均台を飛ぶように渡り、次々と障害物を越え、最後は重りの入ったリュックを背負ってゴールするというもの。
他の子供達はヨロヨロと持ち上げるだけでふらふらなのに、意図も簡単にヒョイと担ぎ上げ、猛スピードでゴールイン。
その姿は大人の目からしても頼もしかった。
「玉運び競争」ではロビンちゃんが一際目を引いた。
普段から沈着冷静なロビンちゃん。
周りではワーワーキャーキャーと慌てて玉を運ぼうとする為、余計に手元が落ち着かずみんなパニクッている中、ロビンちゃんだけはマイペース。
一度も玉を落とすことなく静かにゴールイン。
ここまでは3クラスとも大差無く、子供も大人もミニ運動会とは思えない位の大盛り上がり振り。
そしてとうとう最後の種目。
この種目の得点で、勝敗が決まる。
この競技は第一走者でまず子供が走り、バトンタッチされた第二走者の母親が子供を背中に負ぶって走り、最後に第三走者の先生とみんなで手を繋いでゴールするというもの。
ひつじ組からは、あの「かけっこ」を見ていた誰もが頷けるチビナスが選ばれた。
という事となれば、当然チビナスの保護者としてサンジが出場する事になる。
「ひつじぐみさんずるいよ〜!おとこのひとがでたら、かつのあたりまえだよ!!」
との他のクラスからの抗議があり、ウソップ以外の先生達が考えた末、ハンデとしてチビナス兄はチビナスを抱きかかえ、先生をおんぶしてゴールするという事に決定した…というか無理矢理させられた。
「お、おいっビビ、コニス!なんだそれ、ハンデでかすぎだろっ!
つうか、んな事頼めるかっ!!」
「その位のハンデは当たり前ですよ。それにチビナス君のお兄さん、やる気満々みたいだし」
ビビが指さす方をウソップは振り返ると、スタート位置について手足をストレッチしながら、他のクラスのお母さん達と楽しそうにしゃべるサンジの姿が目に入った。
「……ι」
「ほらほら、ウソップ先生、観念してください♪」
ビビとコニスは笑いを堪えながら、唖然と立ち尽くすウソップを宥め、背中を押した。