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□冬模様10のお題〜09 ふたりきり
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「サンジ…見るか?」
「…ああ」
数時間前、みんなから溜息を吐かれた時と同じ事をすると、今度はその時とは違い、一瞬にしてメリー号が違う世界へと変化した。
パァっと目の前にピンクの花びらが舞い、所々で渦になり花びらを乗せた風が再び舞い上がる。
幻想的なこの光景に目を奪われながらも、サンジの視線は微かに見え隠れしているウソップを離さなかった。
サンジは花びら舞う中ゆっくりと足を進め、ウソップに近づく。
サンジが手を伸ばすのより先に、ウソップが口を開いた。
「サンジ、俺さ…やっぱり無理だι」
伸ばし掛けてた手を素早く引き戻し、ウソップから一歩後ずさる。
「…気にすんな。そうじゃねぇかと思ってたし、ほら、やっぱ他の奴らの目もあるしな…。まぁ、これからも普通に仲間同士っつう事で」
「だから、無理だって言ってんだろ」
ウソップの言い様に流石のサンジも言葉を失ってしまった。
真っ赤になって必死に訴えてくる表情を見ていると、
一気に自己嫌悪に陥りそうになる。
「悪かった…」
「あ、謝る位なら最初っからあんな事言うんじゃねぇよっ」
花びらは最後の一枚が舞い落ち、いつもの空間へと引き戻される。
ブーンブーンとだけ音を出しているマシンのスイッチをウソップがパチンと止めた。
サンジは再び煙草に火を着ける。
空は微かに紅く色付き始めていた。
その春空に向けて煙を吐き、サンジが再び口を開く。
「ウソップ、仲間にも戻れねぇのかよ…」
ウソップは何も答えない。
サンジは再度、問いかける。
「なぁ、ウソッ」
振り返り見たウソップの表情は何とも言えない顔をしていた。
「な、何だ、その顔!聞いてんのかよっ」
「サンジ、お前、何言ってんだよ…、てか…仲間に戻りたいのか?」
「お前が嫌だっつうんなら、仕方ねぇだろ」
「そんな事言ってねぇよ」
「言っただろっ、"もう無理だ"って…」
ウソップは暫く、俯くサンジの顔を覗き込むように見詰めていたが、サンジが顔を上げると同時に今度は顔を逸らせた。
「お前、何か勘違いしてるぞ。俺が言いたいのはそうじゃねぇ」
「?」
「俺が言いたかったのは、お前の言う"普通通り"っつうのが出来ねぇって事なんだよ。お前はどうって事無いんだろうけどさ、俺はお前の顔を見ただけで赤くなっちまうし、足だって震えるし、…逃げたくなるι」
「おい、それって…」
「けど、お前といると楽しいし」
「ウソップ」
「お前は全然普通だしよ、俺ばっか意識してるみてぇでさ…」
「そんで、男部屋にばっかり籠もってたって訳か?」
ウソップは何も言わずちらとだけサンジに目を配る。
サンジは深い溜息を吐くと、落ちかけていた煙草を海へ放り投げた。