夢溜まり

□赤ずきん
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1.赤ずきんに恋をした狼





燦々と輝く日差しの中。
赤ずきんは今日もお使いをしていた。

足取り軽く目指すのは、ちょっと体の悪い主人の住む、彼女の大好きな家。

ガラスの瓶やツヤツヤと瑞々しく張る野菜や果物がこれでもかと詰め込まれている少々重たい籠を、頑張って運ぶ赤ずきん。16才という、一区切りを先日迎えたその姿は、ちょうど大人らしさと子どもっぽさの間をうろうろしているようで、可愛らしい女っぽさの中にはまだ、ほんのりとあどけなさが見て取れる。

歩きつづける赤ずきんが差しかかった、さわりさわりと木々の揺れる小さな森は、目的地までがあと少しだということを表す目印。

赤ずきんは森の中にひっそりと佇む家を目指し、少しだけ痛くなってきた腕に力を込めながらあと少しだと自分にいい聞かせた。


そんな、赤ずきんを追う目が、一対。


―――


「ママってば詰めすぎ…」


食べ物も愛情もいっぱいに入れられている籠。

食べ物はまだいいけれど、瓶に詰まった果実酒が腕にくる。

だいたい、あの人はお酒なんか飲んで良いのだろうか…。少しだけなら体にいいんだよと言っていたけれど、週一回運んでいる上に自分でまで作っている。明らかに飲み過ぎになると思う。


「一緒に飲んでくれる人がいるのかなぁ?……うーん。あ…今日もいい天気」


もし一緒に飲んでくれる人があの人にいるんなら優しい女の人がいいなと軽く思いながら、視線を上に向け、そのまま、頭上の木々の隙間から見える空を見上げた。


「う、きゃ…!?」


と、地面の何かに躓いた。


「っ…」


気が抜けすぎていて、反応が出来なかった。体が傾ぐのが止められない。

籠の中身を気にかけるけど、どうにかできるほど反射神経がよくなかった。


「……え?」


ダメだと思うも、ふと、徐々に近づいてきていた地面と距離が一定になった。

地面と衝突したわけじゃなくて、私の体に腕が一本巻き付いたから。

…なに?


「…大丈夫か?」


聞こえたのは、低めのちょっと横柄な声。


「ぁ…は、はい…」


返事をすると腕が緩まった。体勢を立て直して声の主と面と向かう。


「ありがとうございます…」

「いや、それじゃ」


私の言葉に一瞥を向けるも、その人は森の中に割って入っていき、すぐに姿が見えなくなってしまった。


「……ビックリした」


そのあとをぼんやりと見ていたけど、少し経ってから息と言葉を吐き出した。

久々に転びかけたからか、まだ胸がドキドキしている。


「えっと、キズはないし、果物がちょっとダメージを受けちゃったけど、その他は大丈夫かな。それで、あそこまではもうすぐだよね」


頭に響くほどの鼓動を落ち着かせるために、確認もかねて今の状態を声に出してみた。


「…ん、行こうっと」


そして、ある程度落ち着いてまた歩きだす。


あの人は誰だったんだろう…


...


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