夏目友人帳夢小説


□出会い
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―鬼灯―

私は鬼灯。
孤独で孤高の高貴な妖。



ああ。

あの子は大きくなって、眼鏡の優男と結ばれた。



そしてあなたが生まれたの。



初めて、私に好きだよと言ってくれた。友達が、出来たの。

毎日が輝いていて。

他愛ない話をしたの。
沢山話して、笑って、初めて喧嘩もしたの。

初めて、仲直りもしたの。


ずっと一緒にいられる気がした。



けれど、唐突に。



あの子は私が見えなくなった。


何度も呼んだ。
何度も触った。


聞こえないし
触れない。


それでも、あの子の瞳に私が写る可能性が私を諦めさせてはくれなくて。



あなたが生まれたの。



澄んだ眼で私を見て、私の頬を引っ張った。ああ、痛い。子どもは凶暴だ。



けれど、私を見て、触って、笑ってくれた。



あの子のように、私のことが見えなくなるかも知れない。

怖い。

失うのは一度で沢山。

私を見て、触って、笑ってくれない。

そんな苦しみが他にあるだろうか?



それでも…私はあなたといることを選んだの。


私が出ていこうとするたびに、泣くのだから。


まだ、四つん這いで動くのが精一杯だというのに。


遠い玄関まで一生懸命に追いかけてくる。


眼鏡の優男が止めても、誰もいないように見える玄関に行こうとする。


いつもそう、あなたは寝ていても私が出ていこうとするとそのたびに泣くの。



だから、私はあなたの傍に居よう。


泣かせたくないから。


私はあなたの夢に住む。


あなたの豊潤な香りに集まる妖どもを私は打ちのめす為に。


私は眠る、となり、あなたの夢で。
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