戦国おとぎBASARA

□三銃士パロ〜幸村入隊編〜(完結)
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 時は十七世紀、世は群雄ひしめく乱世であった。国の大小問わず、様々な国が入り乱れて熾烈な領土争いに明け暮れていた。
 ところが、ここフレンチ国の王、今川義元は、雅を愛し、戦よりも舞を舞うのが好きな絶対平和(風雅?)主義者であった。
「やれ、めでたや。酒を持て〜舞いを舞え〜」
 今日も宮殿には義元王の陽気な声が響いた。
 そんな義元王を良いことに、この国を思いのままに操ろうと画策する者がいた。
 闇の枢機教――『魔王』織田信長であった。
 信長は、通称『魔王軍』と呼ばれる警邏隊を組織し、逆らう者は容赦なくひっ捕らえ、魔の監獄と呼ばれるバスティーユ牢獄へと送り込んで行った。
 必然的に信長に逆らえる者は少なくなり、こうして、都に置ける『魔王』の力は次第に高まり、その権力は盤石なものへとなって行った。
 ―――しかし、この『魔王』信長の陰謀に対して間然と立ち向かっていく男達がいた。

 伊達政宗、長曾我部元親、前田慶次という三人の若者達である。
 武器を取らせれば天下無双。悪名高き魔王警邏隊すら手玉に取り、あの『魔王』すら一目置く『軍神』上杉謙信率いる近衛銃士隊の三羽烏…

 人呼んで――


「『三銃士』!」

 と叫んで、都から来た行商人はビールの入ったジョッキをダンッ!とテーブルに置いた。
「この三人の活躍で、それまで幅訊かしてた警邏隊もゴロッツキも下手に暴れられねぇ。お陰でパリの市民は大助かり。何せそれまで、警邏隊の奴らの上長ぶりは目に余るもんがあったのよ。食い逃げ、酒のただ飲みなんてまだいい方…ひでぇ時にゃあ家は壊される。女房、娘は攫われて犯される。逆らえば捕まるか、或いは…」
 行商人は、自分の首の前で親指をスーッと横に動かした。
「あの世行きよ」
 グイッと、行商人はビールを煽った。
「でも今じゃあ、そんなことしようもんなら『三銃士』及びその他銃士隊の面々にとっちめられた挙げ句、自分達が牢獄行きよ」
 行商人は、まるで自分の手柄のように得意気に言った。
「勿論、魔王様が黙ってる訳がねぇ。直ぐさま国王陛下に抗議したらしいんだがよ。銃士隊隊長の上杉様は、涼しい顔して実はヤリ手の政治家らしくてなぁ…今んところ銃士隊にはお咎めナシ!さしもの魔王様も『ええい!小癪な!』と歯軋りギシギシ悔しがってるってワケよ!へっ!ざまぁみろ!」

 因みに、ここは都から離れた農村ガスコーニュである。
 今日は月に一度の市が立つ日で、それに合わせた祭が開催されており、片田舎の農村にしてはそれなりの賑わいを見せていた。
 警邏隊の眼も無いとあってか、行商人は、普段は警邏隊の眼を気にして大っぴらに言えない信長と警邏隊への非難と、銃士隊への賛美を、道行く人や、一緒のテーブルに着いた村人相手に得意満面で話して訊かせた。
 村人達も、滅多に聴けない都の話。それも、“悪い代官がヒーロー(正義の味方)にとっちめられる”という民衆心をくすぐる内容に興味津々で聞き入り、夢中になった。
 祭が終わる頃には、村中『三銃士』の話で持ちきりだった。
 特に、村の若者と女性(老若問わず。何故なら、行商人いわく、その三人は腕っ節が強い上に、そろいもそろってかなりの色男だと聞かされたので)に絶大な支持を得た。
 若者の中には、

「某も都へ出て銃士隊に入りたいでござる。そして、世の為、人の為に働きたいでござる」

 と、思う者も少なくなかった。

 この真田幸村という青年もその一人だった。

 
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