戦国BASARAかってに外伝

□独眼竜と権現
1ページ/1ページ



「ほらよ」

 目の前に用意された皿を見て、家康は目を輝かせた。
「ずんだ餅か!懐かしいな〜!」
 家康は顔中を笑顔にして歓声を上げた。
「そういや、アンタに最初に作ってやった料理はずんだ餅だったな」
 と、政宗も懐かしむように目を細めた。

 家康が、『奥州筆頭』伊達政宗について驚かされたことの一つに、その料理の腕がある。


 まだ幼かった頃、家康が政宗の元を訪れると、決まって政宗は手製の甘味や食事でもてなしてくれた。
 因みに、家康が政宗の元を訪れると、家康を気に入った政宗の従兄弟であり家臣の伊達成実によって、ほぼ無理矢理稽古に連れ出され、お互いクタクタのヘトヘトの腹ぺこになったものだが、その後、やはり決まって、政宗の手料理が二人の胃袋を満たしてくれた。
 政宗は案外面倒見がよく、何くれと家康に手を焼き、家康も、甘えるという訳ではないが、奥州を訪れる度、政宗に纏わりついていた。
「久しく食べていなかったが、この味は変わらんな。…いや、むしろ磨きがかかっている!」
 ずんだ餅を一口食べた家康は嬉しそうにそう言った。
「Thanks!アンタのその食べっぷりは変わんねぇなぁ。でかくもなる筈だ」
 と政宗は言った。
「まさか、アンタに背を抜かれる日が来るとはなぁ…」
「そういう独眼竜は相変わらず細いな」
「余計なお世話だ!」
「ハハハ!そう怒るな!……で、お前の条件は?」
「Ha!タヌキめ」
 今回家康が奥州を訪れたのは、石田三成との戦に対しての同盟の為だった。
「俺の条件か?簡単だ、アンタと俺、どっちが上でも下でもない。…てとこだな」
「お前らしい。だが、儂は元からそのつもりだったぞ?お前と儂の間には、上も下ももない」
「伸びたのは背だけじゃねぇ…か」
「ん?なんだ?」
「いつの間にかタヌキになりやがったなって言ったんだよ」
 政宗はニヤリと笑った。
「タヌキぃ〜?」
 家康は不服そうに言った。
「相手を誑かして煙に巻く。そして、相手から毒気を抜いちまう。日の本から争いを無くす良いタヌキだ」
 政宗はカラカラと笑った。
 一方家康は…
「そうだろうか…」
「Ah?どうした?」
 ずんだ餅の皿を片手に暗い顔をする家康に、政宗は問いかけた。
「儂は…良いタヌキだろうか?」
「?」
「儂は、秀吉公を討った。それは後悔していない。だが、それによって、三成を…友を、復讐の鬼にしてしまった…」
「………」
「そして、今、日の本を東西を二分する争いを起こそうとしている…」
「………」
 政宗は無言だった。
 ただ黙って、家康の言葉を聞いていた。
「絆を説きながら、その手で他者を傷つける…タヌキはタヌキでも、争いを招く悪いタヌキだ……ハハ、これでは元親も儂に着かなかったわけだ」
 家康と誼を通じていた長曾我部元親は、政宗も不思議に思ったが、家康と敵対する石田側と同盟を結んでいた。
「独眼竜…儂は…」
「家康、アンタは光だ。東を束ねる権現様だ。そうだろ?」
「独眼竜?」
 家康は、怪訝そうに顔を上げた。
「アンタは、アンタが正しいと思う道を貫いた。それだけだ」
 今度は、逆に家康が無言になった。
「大将ってのは孤独なもんだ。国、民、その重みを一心に背負う」
「……あぁ」
 家康は頷いた。
「…だが、アンタは一人じゃねぇだろ?」
「?!」
「アンタには、アンタを慕ってついて来る部下がいる」
 家康の脳裏に浮かんだのは、幼い頃から自分を守ってくれた本多忠勝の姿。そして、部下達一人一人の顔。
「わかったか?ソイツらは、アンタに付いて来た。それが全てだ。アンタはソイツら全員の命と誇りを背負わなきゃならねぇ。それを忘れるな」
「そうだな。…儂らしくなかったな。すまない」
「Ha……ま、俺もいるしな…」
 政宗はボソッと言った。
「え?」
「アンタがblueになったら、また、ずんだでも何でも作ってやる。…そういうことだ」
 政宗は、若干照れ臭そうに言った。
「独眼竜〜!」
「どわっ?!抱きつくな!」


 昔からそうだった。見かけに反して、情が深くて優しい彼は、いつもそうやって不器用な優しさでこの心を癒してくれる。



「勝手に外伝」の「独眼竜と権現」のおまけ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ