戦国おとぎBASARA

□三銃士パロ〜幸村入隊編〜(完結)
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 明くる日…

「えい!ヤァー!とう!」
 という威勢の良い掛け声と、何かを振るうブン!ブン!という音が、おしどり夫婦と名高い利家とまつ夫妻の牧場から響いていた。
「でやぁぁぁ!」
「旦那〜!」
 聴き知った声に、幸村は手を休めた。すると、猿飛佐助が野菜の入った籠を担いで幸村の方へやって来た。
「む?佐助か…」
「どーも旦那、精が出るね。でも、何してたの?」
 佐助は、幸村の両手に握られている二本の長い木の棒を見て怪訝な顔をした。
「おお!修行だ!」
「は?!修行?!」
 佐助は、思わず素っ頓狂な声を上げた。
「うむ!俺は都へ参り、銃士隊に入ろうと思っている!その為、まず手始めに素振り五千回をしていたところだ!ハッ!」
 再び猛然と素振りを開始し出した幸村に、佐助は、
「ちょちょ!銃士隊?!何夢みたいな事言ってんの旦那?!…まったく…例の『三銃士』の話に感化されちゃってるみたいだけど…ねぇ旦那…人生そんなにうまく行きっこないって…」
 と、呆れたように言った。
「佐助、俺は本気だ。今夜にでも父上、母上に申し上げようと思う」
「はッ?!」
 佐助は、またも素っ頓狂な声を上げた。「簡単には許してはくれぬだろうが…しかし、最後にはこの幸村の熱き心をわかってくれるだろう!」
 熱く燃えたぎる幸村に対し、佐助はひどく冷めた心境でこう思った。
(そう簡単に行くかな…?)


 その夜――


「幸村、折り入って話があるとはどうした?」
「どうしたのです?改まって…」
 と、父、利家と、母、まつは言った。
「父上、母上…某は、都へ行きとうござりまする」
 と、幸村は言った。
「はぁ…?」
「急にどうしたのだ幸村?」
 戸惑う二人に幸村は更に言った。
「某は都へ出て、上杉殿の率いる銃士隊に入り、世の為、人の為に働きたいのでござりまする!」
 幸村の言葉に、二人は、
「じゅ銃士隊ぃ?!」
「な、何を夢のようなことを申しているのですか?!」
「そうだ!そうだ!それに都はとっても恐ろしい所なんだぞ!」
「犬千代様の申す通りです!きっと、悪い人に捕まって売られてしまいますよ!」
 と、口々に言って、幸村を止めたが、
「何を言われようと某の思いは変わりませぬ!お聞き入れ下さらぬとあらば、どうか親子の縁を切って下され!某、このまま家を出て、その足で都へ向かいまする!」
 幸村の決意は固く、二人にそう言い放った。
「まぁ!この子ったら!よいですか」
 と、まつが怒涛の説教攻撃に入ろうとし、幸村が身構えたその時、
「そうだ!」
 と言って、利家が勢い良く立ち上がった。
「い、犬千代様?」
「ち、父上?」
 幸村とまつは目をパチクリした。
「幸村、お前はどうしても銃士隊に入りたいのだな?」
 と、かつて無いほど真剣な面差しで利家が訊いた。
「無論!」
 と、幸村は即答した。
「よし、ではこうしよう。まつ、耳を貸してくれ」
「はぁ…?」
 利家は、まつに何事か耳打ちした。
「まぁ?!しかし、それでは…」
「だから…ゴニョゴニョ」
「ハァ…わかりました…」
「よし!幸村、明日、お前にちょっとした試練を出す!それを見事乗り越えたら、都へ行くのを許してやるぞ!」
 と、利家が言った。
「誠にござりまするか?!」
「うむ!漢に二言は無い!…良いな?まつ」
「犬千代様の決めたことなれば…」
 利家の言葉に、まつは溜め息混じり答えた。


 
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