戦国おとぎBASARA

□珍説・シンデレラBASARAside(完結)
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「お待ち下さいませ〜!」


 と、空から女の人の声が降って来ました。
「What?」
 シンデレラが空を見上げると、夜空を背景に、一羽の鷹に掴まった女の人がシンデレラの元に舞い降りて来ました。
「まあ!おいたわしや…、シンデレラ殿、まつめが舞踏会に行けるようにして差し上げます故、涙をおふき下さいませ」
 と、魔法使いのまつ姉ちゃんは言いました。
「いや…泣いてねぇし…つーか、まだ台所の片づけと朝飯の仕込みが…」
「それはまつめがやっておきます故、ご安心下さいませ!」
 と、魔法使いは言いました。
「では早速、おいでませ!五郎丸!」
「What?!」
 魔法使いの命で、どこからともなく、巨大な熊が二人の元に現れました。
「五郎丸、裏の畑からカボチャを一つ持って来て下さいまし」
 と、魔法使いが命じると、五郎丸は見事な二足歩行で立派なカボチャを持って来ました。
 魔法使いはカボチャを受け取ると、それに「ちちんぷいぷい」と魔法をかけました。
 すると、カボチャは立派な馬車に姿を変えました。
 更に、魔法使いは、モグラを数匹と、狼と猪を召喚し、またも呪文を唱えました。すると、モグラは馬に、狼は御者に、猪はお付きの者に姿を変えました。
「さて、残るはドレスにござりまする。ホホホ、どのようなものに致しましょうか」
 と、魔法使いはルンルンで言いました。
「色は…やはり青がよろしいでしょうか…ああ!でも黄緑も捨てがたく…いえ、ここは可愛らしい桃色も…」
「Stop!も、桃色は勘弁してくれ!」
 魔法使いの不穏な発言に、シンデレラは慌てて抗議しました。
「左様でござりまするか…」
 魔法使いは、残念そうに言いました。
 紆余曲折を経てドレスの色は、目の覚めるような青に決まりました。
 魔法使いが呪文を唱えると、シンデレラは美しく煌びやかなドレスを纏った貴婦人に姿を変えました。
 しかし、魔法使いは何が気にくわないのか、ドレスをあちこち手直しし始めました。
「こちらのフリルはもっと豪華に致しましょう…あ、こちらにはリボンを添えて…それから…」
「Hey!まだかかんのかよ?!」
 一時間もの間手直しにつき合わされたシンデレラは、辟易して言いました。
「今しばらくお待ち下さいませ、後は、髪飾りと履き物を添えて…ハイ、終わりにござりまする」
 と、魔法使いは満足げに言いました。
 魔法使いの果てしなきこだわりの為、シンデレラのドレスはこの上なく豪華で華やかで、かつ上品に仕上がりました。
 上質な青地の絹のドレスには、レースとフリルがふんだんに使われており、髪飾りは、ドレスに合わせた青い花と白い絹のレースとリボンをあしらった代物で、靴はキラキラと光り輝くガラスの靴、首元には青く輝くブルートパーズがはめ込まれた豪華な首飾り、耳飾りも首飾りとお揃いのブルートパーズで拵えてありました。
 元々派手好きなシンデレラは、その出来栄えに内心まんざらでもない気分でしたが…
「Thanks、前田のよ…魔法使いさんよ…、だが、ちぃっとばかり時間かかりすぎだぜ…」
 時間は既に、午後十時をまわっていました。
 ちなみに、シンデレラの屋敷から王子様のお城までは馬車をカッ飛ばしても最低一時間はかかります。
 ですが、シンデレラは嘆息しただけで、それ以上は言いませんでした。


 だって…


「女の子というものは良いですね…わたくしも、可愛らしい女の子が欲しいものです…。こうしていると…まるで娘の着付けを手伝っているようで…誠に、うれしゅうござりまする」


 などと言われてしまっては、見た目はヤンキー、だけど中身は兄貴属性で結構優しい奥州筆頭は無碍に出来ず、今に至ってしまったからです。
「よいですか?まつめの魔法は十二時までしか保ちませぬ故、努々お忘れなきようお気をつけ下さりませ」


 いや、飾り付けにこだわったアンタのせいだろ!?


 とは、シンデレラはやはり言いませんでした。


「行ってらっしゃいまし〜!」


 と、笑顔で手を振る魔法使いに見送られながら、シンデレラは、舞踏会会場へ馬車をカッ飛ばして行きました。

 
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