ブック3
□風紀委員とピンクくん
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初めて校内で見かけた時は、なんでピンクにしたんだろうと思った。
気付いたら、彼の髪色はピンクになっていて、奇抜な人工色なのに不思議と違和感はなかった。
数日その髪色について囃し立てられたけど、後々に金髪の従兄弟と被らないようにと色をいれたらしいと風の噂で聞いた。
「おい、そこのピンク」
「……ひかる、なんか悪意を感じるんだけど。」
彼の周りには、いつも人で溢れていた。
その中でも、とくに鉄壁と称された三人がいる。
一つ年上の金髪の従兄弟こと浪速のスピードスターの忍足謙也や、四天宝寺テニス部長にして完全無欠の王子様的存在な白石蔵ノ介に、同じクラスでテニス部エースの財前くん。
ローテーションのように、必ず一人は傍にいる。
各々異なった華やかさを持ちあわせていて、四天宝寺で知らない人はいないほどの有名人だ。
ゆえに、嫌でも目につく。
同じクラスの財前くんは、クールという言葉がピタリとあてはまる人だった。
強烈なツッコミが毒舌だの生意気だの言われているけど、綺麗な顔が無邪気に綻ぶのは、彼の前ぐらいでそれ以外は無に近かった。
「ひかる、今日はどーしたの?えらいご機嫌だね」
え、どこが?
そんな微々たる変化に気付くのは彼だけだった。
「あれ、見付かっちゃった」
発言と表情は必ずしも一致しない事実は理解したが、この一切合切悪びれのない態度はなんなんだ。
四天宝寺で注目株の彼と対面したのは、放課後の屋上。
誰もいない。
いるはずもない。
基本的にここは昼休み以外、立ち入り禁止なのだ。
日が暮れ始め、真っ赤な後光が指している。
「風紀委員?」
「そ。笑っちゃうけどこれ腕章」
左腕には、風紀委員の文字。
今日は鍵当番の日だ。
先生は下の階から見回っている。
「風紀委員さん」
「なに?」
「関東弁だね、東京の人?」
大阪では浮いてしまう標準語が今ここに二人いる。
関東弁なんていう辺り、この西の地に馴染んできてる証拠だ。
正直今はそんなことはどーでもいい。
私は早く屋上の鍵を閉めたいだけだ。
「地元が池袋」
「ああ、よく行ったよ。人が凄いよね池袋って」
適当な返しの割には、不快感を覚えない。
学年はおろか、老若男女に好かれる人柄と笑顔は日向のように暖かで、人を引き付ける人間というのは、こーゆー人なのだと改めて実感した。
だから、彼が一人でいるところを見たことがなかった。
「ねぇ、ピンクくん」
「はい?」
「黒に戻さないの?」
「それは風紀委員として?」
「ただの興味。貴方がピンク頭でいることによって、私に害はないから。今のところは」
「じゃあ、害になっちゃったら黒に戻さないとダメ?」
「ダメ」
「手厳しーな。」
「だから、今だけね。見逃すのは」
「ありがとう。捕まらないように気を付けるよ」
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→謙也ver