大空のカケラ

□黒い未来に背を向けた。
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彼が死んだなんて信じない、絶対に。




未来に飛ばされて来た夜、私はお兄ちゃんや未来の事をもう少し聞きたくてこっそりベッドを抜け出した。
薄暗い廊下をひたひたと歩く、明るい部屋からリボーン君たちの声が聞こえた。


そこで信じられない話が聞こえた。



「しかし、10歳もお若い姿とは言え、もう一度十代目にお会い出来るとはっ。」

(あ、ジャンニーニさん?)

最初に聞こえたのはキッチンの流し台の下から現れたあの面白い人の感激に満ちた声。

「それは俺も聞きたかったんだ、この時代のツナは本当に死んだのか?」

リボーン君の声が聞こえた。

(今…なんて…?)

「なんだリボーン“アイツが死ぬ訳ない。”とでも言うつもりか?お前らしくもない。
そもそもお前だって、ここにはもういないんだぞ。」

知らない女の人の声が答えた。あ、昼間見かけた可愛いゴリラを肩にのせたお姉さんかも。

(…え……)

「馬鹿言うな。
俺はただ事実確認しただけだ。山本からはあまり詳しく聞いてねぇんだ。
しょうがねぇだろ。」

「ほぅ、珍しいな。聞かなかったのか。」

「俺だって鬼じゃねぇ。
心が壊れかけてるヤツの傷にわざわざ塩を塗るような真似しねぇよ。」

「ずいぶんお優しい事だな。」

「なんだと?」

ヒートアップして来た二人をジャンニーニさんがなだめた。

「まぁまぁ、お二人とも。
私も詳しくは知りませんが…
なんでも、我等が十代目は話し合いの席で相手に突然撃たれたそうで…
その時はお一人だったようですが、すぐに山本氏と獄寺氏が十代目をお迎えに行ったそうです。
ですが、時すでに遅く……」

「そうか…。」

「ツナは射殺されたのか。」

(…シャサツ…そんな…)


目の前が真っ暗になった。


その台詞を聞いた後、私はどうやって部屋に戻ったのか覚えていない。

気が付いたらベッドの上で痛む頭を抱えていた。

「ツナ君が殺された…?」
(そんな、だって…そんな訳…)

昼間の事がフラッシュバックする。

私とツナ君を襲った怖い人。
その怖い人に刺されたツナ君。
飛び散った深紅の血。

「射殺なんて映画みたいな…そんな事…」

今日だって危なかった。

「でも…お兄ちゃん…ツナ君は死なないって、今朝言ってたじゃない。」

いつもと同じ朝だったのに。

“なに沢田が見当たらない?”

いつもみたいに笑ってたのに。

“心配いらん!どいつもくたばりそーにない奴ばかりだ。”

そう言ったよね?

“この時代の了平は行方不明なんだ”

お兄ちゃん無事だよね?

いつもみたいに心配するなって言って。

お前には俺がついてるって言ってたじゃない。

私を置いていったりしないよね?



“了平は行方不明なんだ”


「信じない。
きっとまた勝手にどこかに行ってるだけだよ。」

…家に帰ったら何か分かるかな。


“ツナは射殺された。”


「信じない。
だってお兄ちゃんが死ぬわけないって言ってたから。」

…お兄ちゃんなら、きっと言ってくれる。

“心配するな京子。
俺も沢田も死んだりしない。”

そうでしょ?


薄暗い朝焼けの中、私はひとりアジトを抜け出した。


お兄ちゃんに会いたくて。

大丈夫だって言って欲しくて。

全部、信じたくなくて。



−−−−−−−−−−−

≪完≫
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