大空を継ぐ者

□パパの純情 ママの恋情
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学校の課外授業で並盛動物園にやって来たツナたち。


並盛動物園に最近移築された観覧車の中、ツナは京子のほんのり薄紅色に染まった顔を見つめていた。


京子に掴まれた腕が熱い。



「ツナ君覚えてる?
前にみんなでここに来た事があったよね。」

「うん。懐かしいね。」

(俺、あの時京子ちゃんとデートしてるって思ってて、なんとか他のみんなに出くわさないように京子ちゃんを連れ回したんだよな…)

実際はデートでもなんでもなかった訳だが。

「ほら。あの時、爆発事件が起きてライオンが逃げ出した事があったじゃない?」

「あったあった。
あれはびっくりしたよね。」

まぁ、
毎度の事ながら、事件の犯人は獄寺だったけれど。

「ツナ君、ライオンから私を庇ってくれたでしょ?
あの時の話をさっきミナちゃんにしてたんだ。」

「あ〜…、あの時か。」

(確か、あの時京子ちゃんは“ツナ君って兎とかハムスターとかのイメージだったけど、もっと頼りになる感じだよね”って言ってくれたんだよな。)

今だったら死ぬ気になればライオンの一匹や二匹どうって事ないかもしれないが、あの時は本当に死んだと思った。

(なぁんだ…
あの時の話か…)

ミナが随分勿体振って話していたから、何事かと思ったツナだったが単なる思い出話らしいとわかってちょっぴりガッカリした。

そんなツナの胸中に気づかず京子は続ける。


ツナの袖を掴んだままで。


「あの時だけじゃない、未来でも守ってくれたし、…約束も果たしてくれた。」


「約束…」


「みんなで一緒に10年前に帰るって。
ツナ君のおかげで今こうやって“ここ”にいるんだよ。
本当にありがとう。」


京子が少し照れたように笑う。


「そんな、俺だけのチカラじゃないし。
京子ちゃんやみんなが一緒に戦ってくれたからだよ。
それに、京子ちゃんやハルは巻き込まれただけなんだから、さ。」

京子の言葉を嬉しいと思いながらも、ツナは申し訳ない気持ちの方が強かった。

(ほんとうは巻き込みたくなかった。
マフィアやボンゴレの事だって知られたくなかったんだ。
だから、もう二度と…)

ツナは思わず京子から目をそらす。

そんなツナに京子は更に続けた。


「私…未来に行けてよかったよ。」


ツナが再び顔を上げる。

「えっ?あんな酷い目にあったのに?」


死にそうになった、
怖い目にも合った、
胸がえぐらるような悲しくて辛い事もあったのに。

ツナの袖を掴んでいた京子の手が更に強くなる。


「ツライ事も、怖い事も、悲しい事もいっぱいあったけど…
お兄ちゃんの事や、ボンゴレの事……ツナ君の事、いっぱい知る事が出来てよかったよ。」


「京子ちゃん……」


健気に微笑む京子に、ツナは何も言えなくなる。


「あ、ごめん。
あんなに大変だったのによかったなんて酷いよね。」

ツナを見ていた京子が申し訳なさそうに視線を伏せる。

「…俺も京子ちゃんがいてよかった。」


ツナの台詞に京子が顔を上げる。

ツナは自分の袖を掴む京子の手に、そっと自分の手を重ねた。

そして、無意識の中でその手をぎゅっと握る。

「最後の戦いの時さ。
京子ちゃん、ハルといっしょに俺に“いってらっしゃい”って言ってくれたよね。
あれ、ほんとにうれしかった。
あの時の俺は何も言えなったけれど…」

その一言がどれだけ嬉しかったか、
どれだけ力になったか、

君の存在が俺にとってどれだけ重要だったか、
なんて、とても伝えきれないけれど……


「一緒に戦ってくれて、本当にありがとう。」


君がいてくれて本当によかった。




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