大空のカケラ

□いじっぱりショコラ
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「し、信じられませんっ!」


ハルは一人驚愕していた。


「そうかな?いつもこうだったよね?」

ツナがハルの驚きっぷりに、逆に首を傾げた。

「そっか、ハルちゃん中学の頃は学校違ったから。」

京子が手をポンッと叩く。

「そうねぇ。初めて見たら驚くかもしれないわね。」

花が興味なさそうに言った。

「すごい…。」

クロームも感嘆の声を漏らす。



「信じられませんっ!
獄寺さんが、なんであんなにモテモテなんですかっ?!」



ハルの驚きの声が教室に響いた。


本日2月14日。
至る所で甘い香りの漂うバレンタインデー。

お菓子会社の陰謀に日本中が躍らされるこの日。
もちろん、この並盛も例外ではない。


中学の頃から毎年、ツナの右腕と親友は一人では食べ切れないくらいのチョコレートを貰っていた。
高校生になった今も、彼らの人気は衰えていない。
いや、むしろ拍車がかかっている。

ツナは噂の友人の姿を探す。

獄寺は廊下で女の子たちに囲まれていた。
同級生たちはもちろん、先輩らしい女生徒もちらほら見える。
ちなみに、山本も先程誰かに呼ばれて席を外していた。


「ハルは“下駄箱から溢れ出すチョコレート”というのを、今日初めて見ました。」


ハルが呆然とつぶやいた。

「アレね。
なんか昔の漫画みたいだよね。
中学の頃はなかった気がするけど…」

「中学の頃は、風紀の監視が厳しかったからじゃないの?」

ツナの疑問に花が答えた。

「あと、獄寺君優しくなったよね。
前は勝手に置いてたら怒ってなかったかな?」

京子がぼんやりと思い出した。

「あ〜、確かに丸くなったかも…多少。」

実は、以前勝手に置かれたプレゼントの山に獄寺がキレてまとめて捨てようとした事があった。
たまたま近くにいたツナがそれを止めてからというもの、獄寺は貰ったものは一様ちゃんと受け取るようになった。
ただ今朝、自分の下駄箱を見た瞬間眉間の皺が増えていたから喜んでいる訳ではないらしい。

「そういうあんたも、結構貰ってるじゃない。」

「俺?」

花がツナの机の横に引っ掛かっている紙袋を見ながら言った。

「もしかしてコレ?
違う、違う。なんかお礼だって。」

「は?」

「これは掃除当番代わったお礼で、これはノート貸したお礼、こっちはCDだったかな?
みんなこんな風にお菓子で返してくれるなんて律儀だよね。」

ツナが紙袋に入ったチョコレートを数えながらにこにこと言った。

「いや、それって…」

花が何かいいかけた時、

「おーい、沢田呼ばれてんぞー。」

クラスメイトがツナを呼んだ。
見れば他のクラスの女の子がドアのところに何人かいる。

「はーい。なんだろう?ちょっと行ってくるね。」

ツナは不思議な顔をして呼ばれた方へ出かけて行った。


「…なんで気づかないのかしら?」

「ボス……。」

花とクロームが微妙な顔になる。

「アイツまたなんかもらってるわね。しかも、あんな顔して笑っちゃって…意外とタラシよね沢田って。」

花がしみじみと言った。

高校に入ってツナはぐんと背も伸び、色々な経験のおかげか精悍な顔をするようになった。
鬼家庭教師の努力(?)の甲斐あって学校の成績も上々。
山本や獄寺に及ばないにしろ、女子たちの間で赤丸人気急上昇だった。
ただ、中学の頃の汚名のせいで表だってアタックする女子はなかなかいなかったので、ツナはその変化に気づいていなかった。

「ツナ君の髪型はタワシっていうより、ハリネズミって感じじゃないかな?」

京子がのほほんと言った。

「誰が沢田の頭の話をしてるのよ?
そうじゃなくって…いいわ…どうせ沢田に渡すんでしょ?」

「うんっ!今年はフォンダンショコラにチャレンジしたんだ!」

京子がちょっと照れながら微笑む。

「あ、そぅ。沢田喜ぶと良いわね…。」

「うんっ。」

ここは友人として忠告すべきが悩むところだが、毎年の事なのでほっておく事にした。
付かず離れずのこの二人だが、そろそろまとまってもいいんじゃないかと花は密かに思っていた。

「クロームもあの先輩に渡すんでしょ?」

あの個性的すぎる髪型の。

「うん。生チョコ…骸様チョコ好きだから、朝からご機嫌だった。」

「六道さん、人気あるもんね。」

京子のセリフにクロームが頷いた。
おそらく彼の下駄箱も甘いものが入っているに違いない。


「六道さんや山本さんはわかるんですよ、カッコイイですから。
ツナさんも優しくてカッコイイですから当然なんですけど、なんで獄寺さんまで!」


ハルがまた頭を抱えてうなる。


「ハル。あんたそんな事言うけど用意してあるんでしょ、チョコレート。」


花があきれた様子でツッコんだ。



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