大空のカケラ

□いじっぱりショコラ
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(よ、予想外です!
獄寺さんが誰からももらってなければ“しょうがないからハルがあげます”って言おうと思ってましたのに!
あんなにたくさん貰うだなんて!これじゃ、どう渡したらいいのか分かりません!!)

ハルは一日中ひっきりなしに呼び出しをくらう獄寺を見て、一人途方にくれていた。


結局、獄寺には渡せないまま放課後になってしまった。


(どうしましょう…コレ。)

みんなが帰った教室で一人、獄寺の為に用意した手提げの中身を見てため息をつく。

「はぁ…。」

「何シケた面してんだ?」

まるで、タイミングを見計らったように獄寺が現れた。

「な!ど、どうしたんですか獄寺さん?」

「あ?十代目を待ってんだよ。」

「そ、そうですか…」

そういえば、先ほどジャンケンに負けたツナがゴミ捨てに出かけるのを見かけた。

「獄寺さんは……大漁ですね!」

「は?コレの事か?」

獄寺は両腕のチョコレートを掲げる。
なんと4つもの紙袋がパンパンになっていた。

「なんだか、虫歯になっちゃいそうですね!」

複雑な胸のうちをごまかすように、ハルは口を開いた。

「…お前も誰かにやるのかよ?」

両腕の紙袋を足元に置いた獄寺がぶっきらぼうにたずねた。

「え?ツナさんには、もうあげましたよ?」

ハルはキョトンとした顔で答える。

「今、持ってるじゃねぇか。」

獄寺はハルが持っていた小さな手提げを指差した。

「これは獄寺さんにですよ?」

「は?俺?」

獄寺が片眉を上げる。

(しまったぁー!うっかり正直に答えてしましました!!
しょ、しょうがないですよね…)

ハルは勢いに任せて一気に喋る。

「ご、獄寺さんのことだからチョコレートなんて貰わないと思ったんです。だから……」

意気込んだ割に段々と声が小さくなるハル。

「ふーん。中身は?」

「あ、ガナッシュです。でも獄寺さん甘いの好きじゃないって前に言っていたので…甘さは控えて、その分お酒を効かせました。」

思わず律儀に答える。

「へぇ。食っていいのかよ?」

「え、あ、ハイどうぞ。」

獄寺はハルからひょいと手提げを受け取ると、昨日ハルが苦労して仕上げたラッピングを乱暴に引きちぎる。

(あぁ…せっかくかわいくラッピングしたのに…)

ちょっと切ない顔のハルを無視して獄寺は箱を開けると、チョコレートをひとつ掴みひょいと口に投げ入れた。


「…うまい。」


「ほ、ほんとですか?!」


獄寺の一言にハルが笑顔になる。


「ああ。」

「あ。で、でも獄寺さんは他にもいっぱい貰ってますから。もっとおいしいのが、きっとたくさんありますよ。」


赤くなった顔をごまかそうとハルはあわてて、下を向いて獄寺の足元の紙袋を見た。


「他のはいらねーよ。」


「へ?」


ハルはまぬけな顔で獄寺を見上げる。


「俺はこれだけで腹いっぱいだ。」


もうひとつ、箱からチョコレートを取り出して獄寺は口に入れた。

「え、あのそれって…。」

「だから、他のはお前が食え。」

獄寺は紙袋を無造作にハルに押し付ける。

「え、ちょっと…」

両手に押し付けられた紙袋にハルがわたわたしていると、獄寺の待ち人が来た。

「ごめん、お待たせ獄寺くん。
帰ろ〜〜。」

ツナが獄寺を呼んだ。

「はいっ。ただいま!!」

獄寺は忠犬よろしく、自分の荷物とハルからの手提げだけを持ってツナの元へと走る。

「あ、ハル。また明日ねー。」
「じゃあな。」

ハルに気づいたツナが手を振るが、両手の塞がったハルは手を振りかえす事が出来ない。

「あ、はいまた明日。…って獄寺さん!」

そのまま帰ろうとする獄寺をハルは呼び止めた。

ハルの声に気づいた獄寺が振り返る。


「あぁ。ありがとな。」

「!!」


獄寺は珍しく優しげに笑うと、そう言い残して帰って行った。



「……こんなに、いっぱいチョコレート食べたらハルは豚さんになっちゃいますよぉ…。」


さらに赤くなったハルのつぶやきに、答える人はいなかった。



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≪完≫

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次はあとがきです。
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