期間限定

□片想い終了記念日
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その日、私は彼からの電話のおかげで浮かれていた。


『京子?今日は久しぶりに早く帰れそうだよ。』

『ほんと?』

彼の声は弾んでいた。

『うん。京子の手料理が久しぶりに食べられそうだ。』

もちろん私の声も負けじと弾んでいたけれど。

『ふふ、じゃあ旦那様の為に腕によりを懸けるね。』


彼とのこんな会話のあと、私は食材を買い込んで、鼻歌なんか歌いながら夕食の支度をしていた。


彼と結婚してちょうど一年。
彼は今日と言う日を覚えているだろうか?


『男なんか、記念日なんて覚えてないわよ。祝いたいなら自分から言っておかなきゃ。』

学生時代の友人たちは口々に言う。

でも、自分から“祝って”なんてとても言えない。
だって、会う事すらなかなか叶わないのに。


彼はボンゴレと言うイタリアンマフィアのボスだ。

その身はどこかの社長や大統領なんかより遥かに忙しい。
最後に一緒に食事をしたのは半月程前だろうか。

でも、彼は忙しいなりにも、私にこまめに連絡をちゃんとくれる。だから寂しいなんて贅沢は言わない。

ただ、今日くらいはちょっとだけでも一緒に過ごせるといいなぁ、なんて思っていた時に彼からのあの電話。

浮かれるなと言う方が無理でしょう?。

ニヤけそうになりながら、彼の好物を作っていく。

その時、もう一度電話が鳴った。

『ハイ、沢田です。』

実は今だに、“沢田です”と名乗る度、頬が緩む。

『京子か?』

『リボーンくん?』

電話の相手は彼の家庭教師様からだった。
何故かいつもより声が固く感じた。

『どうしたの?』

『いいか、落ち着いてよく聞けよ?』

『え…?』


リボーンくんの言葉に、私は浮かれた気分が一気に冷えていくのを感じた。


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