期間限定
□おめでとうございます、ご主人さま♪
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「「お帰りなさいませ、ご主人様。」」
二人の霧の守護者がうやうやしく出迎えた。
「うわっ!びっくりした!
何?どうしたの?何事?」
出迎えられたツナは思わず一歩下がってしまった。
「クフフフ、マヌケな顔ですねぇ。せっかく、僕とクロームが君なんかの為にわざわざ来たと言うのに。」
やれやれといった風情の骸にツナも少しカチンと来る。
「いや、俺が言ってるのはなんでそんな格好なのって事なんだけど。」
骸は今流行りの執事姿。
パリッとした燕尾服が凛々しく、めがねを直す姿がやけに決まっている。
似合い過ぎて厭味なくらいだ。
クロームはメイド姿。
よくあるコスプレなミニじゃなくて膝下まであるクラシックなハウスメイド姿。
ちょっと恥ずかしげに俯く顔が可愛らしい。
「察しが悪いですね。
今日はなんの日ですか?」
「へ、今日?
昨日はリボーンの誕生日だったけど…あ。」
「君、誕生日なんでしょう?」
「いつもお世話になってるボスのお祝いしたくて…。」
「そ、そうなんだ…でも、なんでそんな格好?」
クロームのもじもじとした様子にちょっとジーンとなりつつ、ツッコミは忘れないツナ。
自分の誕生日を祝ってくれるのは嬉しいが、可愛いクロームはともかく、骸の執事姿などツナはちっとも嬉しくない。
「バカですか、沢田綱吉。
いちよう、仮にも守護者の主(あるじ)でしょう君は。」
「主に御奉仕する時の正装だからって骸様が…」
「バカはお前だ…」
純粋なクロームに何吹き込んでるんだ、このパイナップルは。
「形式上、僕も守護者ですからね。
憎きマフィアに形だけとは言え仕えるなど不本意この上無いですが、クロームがどうしてもと言うので。」
「聞いて無いね。」
台詞は嫌々ながらを装っているつもりらしいが、明らかにノリノリだ。
ツナはちょっと頭が痛くなってきた。
「さぁ、望みを言いなさい沢田綱吉。ご馳走でも、城でも、星でもなんでも差し上げましょう!」
骸がパチンッと指を鳴らすと、ツナの部屋がやけに豪奢な大広間になり重厚なテーブルの上には食べきれないほどのご馳走が溢れ出した。
「全部偽物じゃんっ!!」
一瞬すげーとか言いそうになったが、ツナはツッコミを優先させた。
「何を言うんですか。
僕の幻覚は完璧です。
視覚・聴覚・嗅覚・味覚まで掌握した有幻覚は本物以上の感覚を与えますよ。」
食べればちゃんと味もするし、満腹中枢も満たされます。と自信満々に言い放った。
「むしろ怖いよ!」
それはつまり、骸に自分の感覚を支配されると言う事だ。はっきり言ってご遠慮したい。
「ボス。
あのっ、これ貰って?」
高笑いする骸の横にいたクロームが可愛らしい包みをおずおずと差し出した。
「な、何?」
ツナはおっかなびっくりそれを受け取る。
細いオレンジ色のリボンを解くと中には沢山のクッキーが入っていた。
「私が作ったの…あの…骸様と一緒に。」
「えっ!クロームの手作り?!凄いね!ん?骸と一緒に?!」
「勘違いしないで下さい。僕はただ材料の買い出しに付き合ったり、ちょっとバターを混ぜたりしただけです。」
「手伝ってんじゃん。」
クロームの手作りってだけでも珍しいのにプラス骸?レアにもほどがある。
引っ込み思案なクロームと唯我独尊が服来てるような骸からのプレゼントにツナは嬉しすぎて、ドキドキしてきた。
ツナの嬉しそうな顔にクロームも頬を染めて笑顔になる。
ぶつぶつと言っていた骸もそんな二人に苦笑した。
「食べて見ていい?」
コクリとクロームが頷く。
ツナは包みの中からクッキーを一つつまみ出すと、ゆっくりと口に運んだ。
サクっ
小気味良い音がして、口の中に優しい甘さが広がった。
「すっごく美味しい。
ありがとうクローム、骸も。」
「当然です。クロームが作ったんですから。」
文句があるなら殺すつもりでした。
と不穏な事を言う骸にツナもたじたじだ。
クフフフと笑う骸の袖をクロームが少し引っ張って、何か言いたげな瞳が揺れた。
クロームの視線に骸は嘆息しながらも小さく頷く。
「あの…ボス。」
「沢田綱吉。」
「?」
「「お誕生日おめでとう。」」
ツナは霧の二人の言葉に一瞬目を大きくすると、ゆっくりと笑顔になった。
「ありがとう。」
その笑顔はまさに大空を体現していた。
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≪完≫
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他の人からのお祝いも見る?
・雲のお方から
→祝い茶席を設けてあげる。
・みんなからと大好きなあの子から
→言い足りないから、もう一度。
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