期間限定

□祝い茶席を設けてあげる。
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ツナは泣きそうになっていた。


帰り道、一人歩いていると黒塗りの高級車が横に止まり、その中から伸びてきた腕に車の中へと引っ張り込まれた。

しかも、引っ張られた時、運悪く頭を打ったらしくその後の記憶がない。

気がついた時には、見覚えのない部屋で正座していた。

畳の敷かれた和室で、床の間には高そうな壺と達筆な掛け軸が掛かっている。

ただでさえ訳が分からないのに、もっと分からないのは、目を醒ますと目の前に着物姿の雲雀恭也が悠然と座っていた事だ。

雲雀はツナと目が合うと
「やっと起きたね。」
と一言漏らした後、くるりとツナに背中を向け、何やらゴソゴソやり始めた。

とりあえず、この状況の説明を求めて声をかけてみる。

「あの雲雀さん…ここは?」

「僕の家。
まぁ、座ってなよ。」

肩越しにツナを一瞥した雲雀が事もなげに、とんでもない事を教えてくれた。

(ひ、雲雀さんの家ー?!?
じゃあ俺、雲雀さんに拉致られたの?!
な、なんでぇー?!)

余計、訳が分からない。
そう言えば気を失う前に立派なリーゼントを見た気がする。

(えっ、とうとう俺噛み殺されるの?
い、いやだぁー!!
まだ死にたくなぁぁぁいっ!!)

パニックになりそうになるが、ふとある事に気づく。

(あれ、雲雀さんなんか普段と雰囲気が違う…?)

普段の学ラン姿ではなく黒…いや墨色と言うべきだろうか、ピシっとした着物が意外と似合っている。

少し落ち着いたツナが、そろそろと雲雀の手元を覗いてみる。

(お茶?)

カチャカチャカチャとお茶を立てる姿はいつもからは想像つかないくらい繊細に見えた。

(あ。アレだ殺気がない。)

いつもはそばにいるだけで感じるピリピリするような殺気を今日は感じない。

(…この人本当に雲雀さん?)

ツナが失礼な事を考えていると、準備出来たらしい雲雀がくるりとツナの方に向き直った。

「はい。」

「はい?」

雲雀は自分で煎れた抹茶をツナに差し出した。

「あぁ…、はい。」

固まったツナに何を勘違いしたのか可愛いらしい茶菓子も差し出した。

(コレを飲めって事…かな?)

「い、いただきますっ!」

意を決して、ツナは抹茶を口にした。

「おいしい……」

「そう。」

「すっごい美味しいですっ!!」

とんでもなく苦いのかと思ったら、そんな事はまったくない。抹茶の香り、苦味、旨味すべてが申し分ない。

茶菓子も小さく切って食べてみる。

「うわぁ…これも美味しい…」

甘さがホロっと口の中で溶けた。

「気にいった?」

「はいっ!」

「そ。
君、今日誕生日なんでしょ。」

「え、あ、はい。」

(なんで雲雀さんがそんな事しってんのぉぉっ?!)
ツナは叫びたかったが、なんとか耐えた。

「君のおかげで面白いものが見れたし、面白いものも手に入ったし。」

指にはめたボンゴレリングとロールのリングをなでる。

「これはそのお礼みたいなものだよ。」

(やっべぇー!台詞は優しいけど間違いなく雲雀さんだよ!!)

だって、細められた瞳が、もっと面白い噛み殺しがいのあるモノをよろしくね。と、雄弁に語っている。

「草食動物?」

「ハイ。」

「誕生日おめでとう。」

雲雀の真意は分からないが(むしろ分かりたくないが)、とりあえず自分を祝ってくれている事は理解出来たツナは、空にした茶碗を横に置くと、

「ありがとうございます。」

精一杯の感謝を込めて、深々と頭を下げた。

そんなツナの様子を雲雀は満足そうに眺めていた。


.

≪完≫

.

他の人からのお祝いも見る?

・霧の二人から
おめでとうございます、ご主人さま♪

・みんなからと大好きなあの子から
言い足りないから、もう一度。

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