期間限定

□乙女心と秋の空
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「サイテー…」

黒川 花は小さく悪態をついた。


両手の荷物を持ち直す。
久しぶりのショッピングにテンションを上げすぎたのが敗因かもしれない。

ちょっと遠くのショッピングモールで時間を忘れて買い物を楽しんで、地元の駅まで戻ってみると朝は確かに晴れていたのに、ざあざあと雨が降っていた。

(どーしよーかしら。
もう少ししたら弱くなるかしら…)

ちらりと空を睨んでみるが、雨は止みそうにない。
しかも、これ以上遅くなるとまた親の小言をもらう事になるだろう。

(でも、コンビニで傘買うのもなんかシャクだし…)

買い物で少々予算をオーバーしてしまった、コンビニの傘代ももったいない。

(しょうがない、走るか。)
止みそうもない雨に意を決する。


その時、頭の悪そうな高校生たちに声をかけられた。

「ねぇ、君どこ校?」

「かわいいね、一人?」

ナンパ文句が古いな、と、どこか冷めた頭で思った。

(…ナンパ文句に流行り廃りもないか……)

どうやら、自分を高校生と勘違いしているらしい。
大人っぽいと喜ぶべきか、老けているのかと落ち込むべきか、判断に迷うところだ。

「暇なら俺らとカラオケとか行かない?」

高校生たちがニタニタ笑いながら続ける。

確かに、自分は年上趣味だが、こんな頭の軽そうな輩は願い下げだ。

(付き合うなら、もっと知的で大人な人がいいわ。
あの牛柄のシャツの人みたいな……)

「いえ。
もう帰るトコなんで。」

(つか、こんだけ荷物があるんだから遊びになんか行かないと気付けよ。)

花は努めて冷静に、且つ、きっぱりと断った。

「そんな事言わずにさぁ。」

高校生の一人が花の腕を掴んだ。

「ちょっと!は、離して下さいっ!」

(しまった、声裏返っちゃった!!)

自分で思っている以上に緊張しているらしい、声がおかしい。

「ぷっ、かっわいい声〜〜」
「そんな緊張しなくっていいんだよ〜〜」

馬鹿にしきった様子で高校生たちが笑い出した。

周りの人がどんどん通り過ぎていく。
皆、“厄介事に巻き込まれるのはごめんだ”と言わんばかりに見て見ぬフリをして通り過ぎて行った。

頭に血が上る。

「は、離してよっ!!」

腕を振り払おうとしたが、完全に面白がっている高校生は腕を離さない。

耳障りな笑い声がやけに恐ろしい。

「イヤっ!!」


「お前ら、何をやっとるっ!!」

どこかで聞いた事のある声が響いた。


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