期間限定

□ドン・ボンゴレ誘拐事件
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「え!まさかそんな…はい、こちらに異常は……」


草壁はドン ボンゴレの右腕からの電話に至極驚いた様子で答えていた。

傍らにいた彩音は軽く眉をひそめると、流れるような手つきで父親の部下から携帯を引ったくった。

「どうかしたんですか?」

『あぁ彩音か……ミナお嬢様はお元気か?』

何か口ごもった獄寺に彩音は澄ました声で答えた。

「凄く楽しんでるわ。今、秋人たちとシューティングゲームに挑戦中よ。
何か問題でも?」

『いや…なんでもない。
今日はずっと行きたがってた遊園地に行ってるんだったな?』

「ええ、そうよ。護衛ならいつもの二人に私や晃平、あと風紀の者を多少つけてるわ。」

『そうか…変な動きがある、注意しろ。』

「変な動き?」

『あぁ、だがお前らが帰る頃には決着をつけておく。
楽しんでこい。』

「あら…そう…わかりました。」

『じゃあな。』

ブチッ ツー ツー

獄寺は言うだけ言うとさっさと電話を切ってしまった。

彩音は切られた電話を草壁に返す。

彩音は遊園地にあるカフェのテラス席に優雅な仕草で座り直した。

隣でアイスコーヒーをすすっていた晃平がストローから口を離す。

「獄寺のおじさん何だって?」

「“楽しんでこい”ですって。」

彩音が薄く笑う。

「そうか。つまり俺たちには何も言わなかった訳か。」

晃平は手元のミニノートパソコンに笑いながら視線を戻す。

「ええ。お言葉に甘えましょう?」

ふふ、と彩音が含みのある笑みをこぼした。

「にしても、思ってたより極限悠長だな。
俺たちはともかく、ミナには帰ってこいと言うと思ったが。」

パソコン画面を見ながらなんと無しに呟く。

「そうね。マーモン辺りに透視でも頼んでるのかも。
すぐ見つかるって高を括ってるんじゃない?」

「だろうな。…手は打ってあるんだろ?」

「もちろん。」

ふふふ、と笑い合う二人は遊園地に遊びに来た無邪気な子供ではなく、闇取り引き中の代官と悪い商人みたいだった。


「お嬢、これはいったい…」


訳が分からないと顔に書いている草壁に見かねた晃平が苦笑しながら答えた。

「今日がなんの日かお忘れですか?」

「今日ですか?4月…っあ?!」

晃平の台詞に草壁もすぐに合点がいった。しかし、コレはあまりにも…

「…いや…でも、ものには限度ってものが……」

しどろもどろに答える草壁に彩音が笑う。

「ちょっとした子供の悪戯よ。」

「「そーそー、可愛い嘘だよねー!!!」」

「うおっ?!って霧の双子?!」

草壁の左右から可愛いらしい声が上がった。
ひょっこり現れた双子に彩音とこが軽く手を上げる。

「律、戒ご苦労様。」

「お疲れ。
上手くいったか?」

「「もちろんっ!!」」

双子がユニゾンで答えた。
律の手には青いラジコンカー、戒の手にはそのリモコンが握られていた。
何故か青いラジコンカーはびしょびしょに濡れている。

濡れたラジコンカーを草壁が見ていると、その視線に気付いた律が草壁を見上げた。

「これ?
ちょーーっと追いかけっこをやってね。
あんまりしつこいから、海に落ちちゃってさ。」

「そうそう、そしたら皆泡食ってねー。おもしろかったーー!」

双子がケタケタと声を上げた。

「まさか…何人か道連れに?」

草壁が青い顔になる。

「まっさかぁ〜そんな事したら二人が悲しむじゃーん!」

人的被害は二の次らしい。

「そうそう!せっかくここまでお膳立てしたんだもん、楽しまなくっちゃねー!」

多分ボンゴレ本邸は楽しいどころか、とんでもない事になっているだろう。

草壁は普段は頑丈な胃が悲鳴を上げる気がした。

(あぁ、獄寺さん、山本さん早く気付いて下さい。)

草壁は思わず天を仰ぐ。


「でもさー。こーんな簡単に成功するなんて、ボンゴレの先行きが不安だねー。」

「ねー。」

「そうね。」

「まぁ、確かにな。」

訳知り顔で頷き合う子供達に草壁は思う。

(君たちの先行きの方がよっぽど不安だ!)

律が抱えているラジコンカーはボンゴレ本邸から走り去った車とサイズは違えど、まったく同じものだった。



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