期間限定

□そー言えばそんなコトもありました。
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「でも、まさか黒川が笹川先輩と結婚してたとはね〜〜ビックリしたわ。」


中学時代の同級生の言葉に笹川花、旧姓黒川花はゆっくりと顔をあげた。

「そう?まぁ、私もあの頃はこうなると思わなかったけど…」


何十年ぶりかの同窓会。
随分変わった者、驚くほど変わらない者、皆様々。

久しぶりに会う、かつての同級生に花はうなずいた。


「我が校のマドンナも子連れになっちゃったしね。」

そんな台詞に親友の方を見れば、他の子連れの女子たちと何やら話しこんでいた。

その側で、親友の娘と自分の息子がしゃがみ込んで遊んでいるのが見える。
その二人を囲うように黒髪と銀髪の子供が座っていた。

「知らなかった男子、けっこういるみたいだね。」

ちらりと見れば、会場の一角にヤケにペースの早い男子の集団がいる。
テンションの高さがいっそ憐れだ。

「笹川さんに憧れてる男子、多かったもんねぇ。」

「ふん。何の行動も起こせなかったバカ共なんか、知ったこっちゃないわ。」

花が一蹴した。
周りにいた女子たちが苦笑する。

「流石黒川、手厳しいわね〜〜」

「そー言えばさ、笹川さんにパンツ一丁で告白したヘンタイいなかった?」

同級生の台詞に、微かに花は目を見開く。
ヘンタイ…まぁ確かに。

「あ〜いたいた!!えーっと……ダメツナだ!」

「いたいた!ダメツナ!!」

「アイツ笹川さんに対してはたまに大胆だったよね〜」

「いっつも玉砕してたけどー!!」

ケラケラケラケラと女子たちが笑う。
花は違う意味で女子たちと一緒になって笑っていたが、ふいに笑いを引っ込めて一言。

「でも、少なくとも何もしなかった奴らよりマシよ。」

何人かの男子たちの肩が不自然に固まった。
女子たちはそんな様子微塵も気にせず、出て来た名前の主の噂話を始める。

「まぁね。でも、笹川さんが結婚したって聞いたらダメツナショックでしょうね〜〜」

「うーん。見物だわ。」

「確かに知らなかったらショックでしょうね。」

花は再び笑いだしそうになるのを抑えながらうそぶいた。

「アイツどうしたんだろうね〜」

「なんか、親戚の仕事を継いで今はイタリアにいるって噂聞いた事あるんだけど。」

噂話もバカには出来ないわねぇ、と花は胸中で呟く。

「何それ!仕事を継いだって、じゃあ社長ってコト?!」

「えー?あのダメツナが?ありえなーいっ!!」

ゲラゲラと女子たちの笑い声が高く響いた。

「何々?ダメツナって…あぁ沢田のコトか。
懐かしいわね、そのあだ名。」

上がった笑い声に興味を持ったのか、高校も同じだった飯塚が振り向いた。

「そっか、飯塚ダメツナと高校一緒だったんだっけ?」

「うん、まぁね。
今日って沢田来るの?」

「あぁ、仕事の関係で遅れるけど来るみたいよ。」

花がしれっと答えた。

「そっかー、沢田来るのかー…まだ結婚してないといいな……」

独身らしい飯塚がちょっと夢心地で呟いた。

「ちょっと飯塚、何その発言?」

「何が?」

「だってダメツナよ?」

たとえ独身だってアレはないでしょ、と続いた。

「あ〜そっか。田中さん高校の頃の沢田知らないんだ…勿体ない……」

「ぶっ!」

飯塚の心の底からの呟きに花は思わず吹いた。

(“ダメツナ”から“勿体ない”とは…随分株が上がったわねぇ…)

「なにそれ?」

田中は首を傾げるが飯塚はそれ以上は言わなかった。
多分、説明するのも勿体ないと思ったんだろう。


「来てないって言えば、あの二人も来てないよね。」

「「「山本君と獄寺君!!」」」

この二つの名前が話題になると女子たちのテンションが一気に上がった。

花が少々引くぐらい、他の女子の目が爛々と輝く。


「も〜〜すっごく楽しみなんだけど!」

「うんうん!あの頃の二人めっちゃ格好よかったもんね〜」

「あら、高校の頃も格好よかったわよ。」

「うわ〜見たかったな〜〜。」

「私今日あんまり来る気なかったんだけどさ、幹事があの二人も来るって言うから有休もぎ取ったわよ!」

「私もそれ聞いて参加決めた!成長したあの二人とか楽しみ過ぎる!」

「あんた人妻じゃん…」

「これはコレ、それはソレ、よ。」

「はあ…そーゆーもん?」

花は訝しんだが、盛り上がっているのにわざわざ水を差すのも気が引けたので黙っておいた。
いろんな意味で。

それにしても。

(なるほど、ね。
女子の参加率が異様に良いのはそのせいか。)

つまり山本と獄寺の名前を餌にした訳だ。


「なかなか、上手いコトやるわね。」


きゃーきゃー言っているかつての級友たちを横目に、花は一人感心していた。



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