期間限定
□青い気持ち 白い誓い
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「獄寺君、大丈夫?」
淡い白銀色の礼服を身に纏った綱吉の心配そうな顔に、獄寺はひどく恐縮した。
「心配いりません。
獄寺隼人、必ずやこの大役を全うさせて見せます。」
台詞は心強いが、酷い顔色は見る者をかなり心細くさせた。
「いや〜やっぱりプロに頼んだ方がいいんじゃねーの?」
「うっせぇっ!
お前こそ、友人代表のスピーチ大丈夫なんだろうな?!」
「もちろんっ!楽しみにしててくれよな!」
獄寺と打って変わって、山本は見る者を安心させるような笑みを浮かべた。
「うん。まかせたよ。
でも、披露宴にはビアンキがいるんだよね…うっかりしてた。」
先程、綱吉の様子を見に来たビアンキと鉢合わせした獄寺はそこで“今日の披露宴の司会、楽しみにしてるわ。”と言われるまで、姉の存在をすっかり忘れていた。
しかも、彼女は他の居候たちと共に、新郎側の身内席にちゃっかり陣取っている。
「どうしようか、仮面とか付けて貰うのも変だしなぁ……」
「いえ、大丈夫です。
最近は姉貴を見ても倒れなくなりましたし。
腹は多少痛くなりますが、なるべく姉貴を見ないようにすれば問題ありません。」
獄寺は、メラメラと燃えるような決意の表情を見せる。
「まぁ、いざとなったらアシスタント役のハルがなんとかしてくれるんじゃね?」
「あぁ、ハルは司会とか得意だもんね…」
式のすぐ後の披露宴の司会進行が獄寺に決まった時、“隼人さんだけじゃ、心配ですっ!”と、ハルが直ぐさま主張した。
もちろん最初、獄寺は一人でいいと言い張ったが擦った揉んだのあげく、獄寺がメイン、ハルがそのアシスタントをする事になったのだ。
…正直、綱吉は友人に披露宴の司会まで頼むのは気が引けたが、
“十代目の大切な日を他のヤロウに任せるなんて、右腕として我慢出来ません。”
と、獄寺がしつこくしつこく迫ったので、
“じゃあ、よろしく頼むよ。”
と結局折れた。
根負けした、とも言う。
「ふんっ。
本来なら、俺一人で十分ですが、他ならぬ十代目と奥様たっての希望ですから。
まぁ、賑やかし役にはちょうどいいっス。」
「素直に心強いって言えばいいのに。
相変わらず意地っ張りだよな〜獄寺は。」
「なんだとっっ?!」
山本のツッコミに獄寺がいきり立つ。
「まー、まー、二人とも落ち着いて……」
綱吉も山本と同意見だったが、ここは獄寺を宥める事が先決だった。
コンコンッ
「ツっく〜ん、ちょっといい?」
控え目なノックと鈴を転がすような声が隣にある新婦の控え室からした。
「あ、うん。
今行くよ。」
綱吉は少し頬を染めて応える。
山本と獄寺は小さく頷き合うと、さっと立ち上がった。
「じゃあ十代目、俺達戻ります。」
「あとでな、ツナ!」
「え、あ…うん、二人とも今日はよろしくね。」
綱吉は幸せそうにはにかむ。
「まかせて下さい。」
「まかせてくれよ。」
頼もしい台詞を残して、二人は控え室を後にした。
「ツっく〜ん?」
「あ、今行くよっ!」
綱吉は油断するとデレっと緩みそうになる顔に気をつけながら、花嫁が待つ扉へ向かった。
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