novel
□T
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ゴ、ゴゴン、ゴンゴン…
不規則な音をたてて馬車が夕暮れの道を行く。人はよく煩わしい音だと言うそうだがトトイスにとっては心地よいメロディだった。この音と共に育ってきたのだ。体に染み込んでいる。
「おおーい、着いたぞー!!寝てるもん起こせー!」
低い、男の声が響いた。ルッジの声だ。
「起きろトト、着いたってよ」
馬車の荷台にいた数人がわらわらと起き始める。トトイスも隣にいた男に起こされ、大きなあくびをしながら目をさました。
まだ少し眠い目を擦りながら荷台を降りると、仲間たちがテントを張ったり簡単なかまどを作ったりとせわしなく動いていた。
トトイスもテント張りに加わり、慣れた手つきでペグを打ち込んだ。
30分ほどで小さく簡素な集落ができる。トトイスが生まれて15年、当たり前に見てきた風景だった。
「うーし!ご苦労!朝までゆっくり休んでくれ」
「「「おぉ」」」
ルッジが仲間たちに労いの言葉をかけると、作業を終えた面々は食べたり飲んだり歌ったりして、好きに時を過ごした。