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□WHITE DAY
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−3月14日−
今まで意識した事なんてなかったけれど今年は今までとは違う。
バレンタインのお返しをする日、女子たちに数えるのも億劫な程もらってしまったチョコレートのお返しなんてする気はないけれど、大好きなあの人にもらったチョコのお返しくらいはしたい。
でも自分の性格では素直にお返しなどできもしないのだ。
その事で悩んでいると本人の顔もまともに見れない、忍足を避け気味になりついには一週間口も聞いてないまでに至る。向こうも呆れてしまったのか話し掛けてもくれない、最近元気がないのは俺が避けてるからかとか自分に都合のいいように考える。
******
教室でボーっと外を眺めていると幼馴染みの芥川慈郎と宍戸亮が目の前で他愛のない会話をしていた。
不意に慈郎が俺に話を振る、
「あとべー、明後日何の日か知ってる?」
「アーン?」
そんなのは知っている、数日前から必死に悩んでいるホワイトデーだ。
でもすぐにそんな事答えると意識していると思われる、だから素直に言いだせない。
「……知ってる、監督の誕生日だろ。」
どうでもいい事を口にして話を替えようとした。
しかし慈郎はニコニコしながら言う、
「違うでしょーそんな事じゃなくてーもっと大事な日でしょ?あとべずっと悩んでるじゃん。」
「なっ…なんの事だ…?」
「だーかーらー侑ちゃんへのバレンタインのお返しの事で悩んでるんでしょ、バレバレだよ。」
「ちがっ!」
「違くない。」
やはり慈郎には嘘は付けない、俺が嘘が下手なのか慈郎が敏感なのかはわからないけれどいつも嘘がバレてしまう。
「最近侑ちゃん元気ないよね、あとべが無視するからじゃないの?」
慈郎は痛い事をズバズバ言ってくる
「それは…その…」
「亮ちゃんは鳳に何かあげるの?」
慈郎は急に話を宍戸へと振ると宍戸は“ん?”っと言ってから口を開いた。
「俺?俺は別に…一緒にいる約束はしたけど何かあげる予定はねぇけど。」
「一緒に?そんな事でいいのか?」
跡部はついつい軽くそんな事呼ばわりしてしまうと、
「そんな事ってなんだよ!?別にいいだろ!」
「あとべはとりあえず侑ちゃんの機嫌を直す事考えなよ。」
「……あぁ。」
慈郎に言われ珍しく素直に頷く跡部がいた。
今日はもう前日だというのに何のアイディアも浮かばないまま忍足とも喋れずに学校から帰宅。
明日は休日だ、会う約束をしなければそれで終わってしまう。お返しの方法なんてないけど彼に会いたい気持ちは胸を締め付けられるくらいある、何せ一週間以上も口をきいていないのだから。
とりあえず宍戸たちの真似みたいで嫌だったけれど、電話して会う約束だけはしようと思った。
手に持つ携帯が震える、電話で話すくらいの事なのに期待と不安が込み上げる。
『はい……』
聞き慣れた関西弁が耳に心地いい、
「あの、俺だけど…」
『なに景ちゃん…』
やはり元気がない、俺から電話するとバカみたいに喜ぶ忍足なのに。
「えっと…あの…明日会えるか?」
『……明日……うん、平気やけど…』
「そうか、じゃああの公園で二時に待ってる。お前、遅れるなよ。」
あの公園とは跡部の家と忍足の家の丁度真ん中辺りに位置する公園で、よくそこで待ち合わせをしていた。
電話を切り、明日は忍足に会えるのだと思うと嬉しくて鼓動が高鳴る。
ぎりぎりまでプレゼントを考えようと会う時間も午後にした。今日は早く寝て彼のために何かしようと考える跡部だった。