GIRL

□love you
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四月、桜舞い散る入学式、跡部景吾は氷帝学園中等部へと入学した。
氷帝は幼稚舎からエスカレーター式に大学院まであるマンモス校なので外部からの入学者以外の面子は殆どそのまま進級していく為周りの顔ぶれは変わる事がなかった、唯一の違いは校舎が小等部から隣の中等部に移るくらいだ。
朝早くから制服をきっちり着込み跡部は壇上で新入生代表の挨拶をしていた。
もちろん跡部が学年一の成績でこの役目を任されたのだが、当たり障りのない言葉で挨拶を終えると礼をして壇上から降りる。
跡部の姿に見惚れるものや妬む者の視線を浴びながら歩く姿は美しいとしか言えなかった。
式場の外には小等部から噂になっていた跡部景吾の姿を人目見ようと高等部の生徒が覗きに来ている程。

式を終えるとクラスに誘導される、跡部は一年A組。出席番号はもちろん一番で廊下側の前の席で大人しく座っていた、すると

「君が跡部さん?」

話し掛けてきたのは顔も見たことのない生徒、外部からの入学者だろうか、跡部は鬱陶しそうに視線を彼に移すとまた視線を外す。

「ちょっと、なんで無視するの?」

彼女は面倒臭そうに声を発した、

「お前誰だよ、気安く話し掛けるな。」

それだけ言うと立ち上がり教室を出て行ってしまう、その様子をクラスメイトは無言で見届けていた。




屋上に向かう跡部、クラスに居たらまたああいった奴等に絡まれるのは目に見えている。
小等部では幼馴染の宍戸亮と芥川慈郎が同じクラスだった、しかし中等部では見事に別のクラスになってしまって。
一人でいるのは苦ではないが変な輩は彼らが追い払ってくれていたのだが、今はそれが居ないわけで…

「はぁ…」

溜め息を吐きながら重い扉を開くと青い空が広がっていた、もうあの教室には戻りたくない。
そんな事を考えながら柵に腕を掛け外を眺めていると、

「んん…」

後方から小さな声がする、寝息だろうか。跡部は振り返り扉の方を向くと扉の建物の上に不審な人影を見つける。
ずっと見ているともぞもぞと動き出しムクリと顔が上がる、その瞬間その不審な人物と目が合ってしまい言葉さえも出ずに数秒間見詰め合っていた。
先に声を発したのは彼の方で、

「アンタ一年?」

ゆっくりと梯子の途中から飛び降りてこちらに歩み寄りながらそんな問いかけをしてくる彼に頷く事しか出来なくて、すぐ目の前まで歩み寄られ跡部は無言でその男を見上げた、

「なんや随分と別嬪さんやね、どこのクラス?」

軽そうに話し掛けられて黙っている跡部ではない、

「お前こそ誰だよ?」

不審な目線を向けそう問えば彼は“はぁ…”と溜め息を吐き、

「かわええお顔に乱暴な言葉は似合わへんよ?」

そう言うと共に背を向け屋上から出て行ってしまう、その後ろ姿を見つめる跡部。
結局誰なのかわからなかった、氷帝の制服は着ていなかったが教師にしては雰囲気が若い、しかし中学生には見えない。
頭に疑問符を浮かべつつ腕時計を見るとホームルームが始まる時間で焦って教室へと戻って行った。


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