GIRL

□love you
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「お前、跡部に手ぇ出したら許さねぇからな。」

置き去りにされた二人の間には険悪なムードが漂っていた、もちろんそんな雰囲気を醸し出しているのは宍戸だけで、長身の彼の方は聞き流すような態度を崩さなかったが。

「あの子、跡部って言うんか?跡部何ちゃん?めっちゃ別嬪さんやね。」
「お前、俺の話聞いてたか?」
「なん?」
「だから跡部に手ぇ出したら許さねぇって…」
「あぁはいはい、聞いてましたよ、で下の名前は?」
「景吾だよ。」
「跡部景吾か、名前も可愛らしいんやな。」

ふふと笑う彼の横で跡部が危ないと危機感を募らせる宍戸だった。


******


「けーいーちゃん」

昼休み、聞きなれない声と共にやってきたのは長身のあの男だった、その後ろには宍戸もいて。二人は朝の険悪さは微塵も感じられなかった、どうやら単純な宍戸は早速この男に丸め込まれたらしい。

「忍足のヤツ中々話のわかる奴でよ…」

コイツは“忍足”という名前なのか、宍戸の忍足語りなど耳に入らずに微笑を浮かべている彼を嫌そうに睨んだ。

「何か用か?」

冷たく言うと彼は笑顔を崩さずにこんな事を言う、

「景ちゃんの事、もっと知りたいなー思て。」

殆ど初対面も同然なのに“景ちゃん”などと呼ばれて腹の立たないわけがない。

「ウゼェ、消えろ。」

それだけ言うとまた席を外す、こんなムカツク奴と同じ空間に居るのなんて耐えられない。

出て行ってしまった彼女の後ろ姿を見ながら残念そうに、しかし楽しそうな表情を浮かべる忍足。宍戸は宍戸で“いつもああだから気にするな”とフォローが入ったが実際は気にしてなどいなかった、これからの学校生活が楽しくなりそうだとほくそ笑む忍足侑士がいた。


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