GIRL

□合縁奇縁
5ページ/6ページ

******

「跡部さん、そろそろ俺と付き合う気になった?」
「‥‥‥。」
「聞いてる跡部さん?」
「‥‥‥。」
「〜〜、オイ!バカにしてんのか!!」
「‥‥‥。」
「何も言わないって事はOKって事だな!こっち来い!!」

跡部は今だに黙ったまま上の空でいるとキレた男に腕を掴まれ引きずられるように体育倉庫に入れられそうになった、その時

「ぐっ!」

鈍い音がして男が倒れる、振り返るとそこには千石が立っていた、

「跡部くん何してるのさ?こんな男と…」

自分が倒した男を見下ろし跡部に尋ねるが跡部は“別に”としか言わなかった。
二人がそんな実のない会話をしていると後ろから跡部を呼ぶ忍足の声がした、跡部は咄嗟に目の前に居た千石に抱きついていた、千石も初めは戸惑ったが跡部は前々から狙っていたのでラッキーという事にして跡部の腰に手を回す。
忍足が角を曲がると二人の抱き合っている光景が目の前に広がる、唖然としながら見ていると跡部は千石へ“帰ろ”と呟き二人は寄り添って歩いて行っていまう。忍足はそこに立ち尽くしたままに。
「跡部くんどこ行く?」

様子がおかしいのはわかっていながら普段と同じテンションで跡部に問い掛ける千石、跡部は小声で呟く、

「ホテル…」
「えっ!?マジで?でもいいの?」
「いい、どうせあいつだって……」

跡部は半ばヤケクソになっていたのかホテルに行くと言いだした、千石はまたもラッキーと跡部を連れてホテルに入って行く。
跡部はもちろんこんな所に来た事などない、それとは逆に千石は慣れた口調で聞いてくる、

「お風呂入る?」

跡部は緊張気味に首を横に振ると千石は“じゃあ僕入るね”と行ってしまった。周りを見回すといかにもな雰囲気のベットや化具や照明がある、下品だなと思いながらベットに座るとシャワーの音が響いてきて緊張してくる、頭に浮かぶのは忍足の事ばかりだ、きっと忍足もあの女を抱いたのではないかとか嫌な考えばかりが頭を回り顔をベットに押しつけ涙を拭った、シャワーの音はいつの間にか消え千石がバスローブで出てくると跡部の横に座った、

「ほんとにいいの?」
「いい…」

その言葉を最後に肩を優しく押してベットに押し倒すと上に覆いかぶさり首筋へと顔をうめて舐め上げる、跡部は初めての感覚に身震いしながら目をギュッと瞑ったまま開けようとしなかった、急にブラウスの上から胸を揉まれてビックリして声を上げてしまう、

「ぁんっ!」
「ふふ、可愛いね」

顔を横に向け頬を赤く染める跡部は今まで抱いたどの女よりも可愛く綺麗だった。ブラウスのボタンを一つ一つ外しながら足を撫で上げる、少しずつ足の付け根へと手を這わせると跡部は更に目を強く瞑り目尻には涙が溜まっている、顔を上げた千石が跡部のその様子を見て溜め息を吐く、
「跡部くん、今誰のこと考えてる?」
「え?」

目を開け千石を見ると彼はまた溜め息を吐き言った、

「僕のことなんか全然頭にないでしょ、失礼しちゃうよまったく。」
「……ごめん。」
「謝らないでよ、僕が惨めじゃん。」
「………ごめん。」
「もういいよ、早く忍足君のところ帰りな。」
「えっなんで…?」
「さっき帰りぎわ忍足君、跡部君のこと探してたじゃん、何があったか知らないけど早く仲直りしなよ。」

跡部はしばらくの沈黙の後小さく頷くと服を着込み立ち上がる、そして去りぎわにもう一度“ごめん”と呟きホテルを後にした。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ