G00U
□tempt doll
1ページ/4ページ
定期テストが終了して三日。
ハプティズム邸でハレルヤに噛み付かれロックオンにお仕置きをされてから二週間。
「ティエリア、今日の放課後空いてる?」
昼休みもあと五分という時、机にやってきたアレルヤ・ハプティズムにそう問われたティエリア。
次の授業はテスト用紙の返還になる為、殆ど満点に近いティエリアにとっては退屈な時間となるテスト明けの一週間だった。
「………」
「迷惑だったかな?」
黙ってしまったティエリアにアレルヤは申し訳無さそうに再び問い返した。
「いや、迷惑というわけでは…」
「本当かい?ティエリアのお陰で数学が凄くいい点を取れたんだ、できたらお礼がしたいなって…」
「いや、構わない」
「え、いいの?じゃあ、今日うちに寄ってくれるかい?」
ティエリアは“お構いなく”の「構わない」だったのだけれど、アレルヤはどうやら逆の意味でとってしまったらしい。
アレルヤの嬉しげな笑顔に再び断ることが出来ず、推され気味に頷いたのだった。
+++++
「実は母から紅茶の葉が届いてね」
「そうか…」
道を歩きながらアレルヤは楽しそうにティエリアに話し掛けていた。
どうやら海外に勤務している父親に着いて行ってしまった母親が、度々そうやって海外の特産物を送ってくるらしい。
前に紅茶が好きだと彼に話したことを覚えていたようだ。
「楽しみだ…」
ティエリアはアレルヤの隣でそう呟いたけれど、頭の中は先日訪れたハプティズム邸でのことを考えていた。
+++++
「いらっしゃい」
玄関の扉を開けてティエリアを招き入れ笑顔を見せるアレルヤ。
彼女が靴を脱ぐのを待っていた二人の前に、最も会いたくなかった人物が顔を見せる。
「なんだー女連れで、珍しいこともあるもんだな」
「ハレルヤ…」
リビングから出てきた男はそんな軽口を叩きながら二人の前に立った。
「もう帰っていたの?」
「ダリぃから早退した」
「まったく…」
「それより、彼女紹介しろよ」
先日人を襲っておきながら此処にきて他人のフリをするハレルヤ。
ティエリア自身もその方が都合が良かったので黙って出方を伺っていた。
「か、彼女じゃないよ!!」
ハレルヤの言葉に酷く動揺し否定するアレルヤを面白そうに眺めている男。
「同じクラスのティエリアだよ」
「ああ、知ってる」
アレルヤの言葉にハレルヤはそう返答した。
確かにティエリアを知らない者など同じ学校に通っていればいないだろう。
容姿端麗、頭脳明晰で常に主席をキープしていれば知らない方がおかしい。
「知っているなら聞かないでよ。…ごめんねティエリア、これが弟のハレルヤだよ」
「ああ、知っている」
ティエリアもまた端的に答える。
ハレルヤも学校では目立つ存在として有名であった、もちろんティエリアとは真逆の意味で、だ。
見た目だけなら鍛えられた肉体と、整った容姿を持っており女子に人気もありそうなものだが、それ以上に素行や女癖の悪さなどで有名で学校の番長的存在でもあった。
しかしティエリアは別の事でもっとずっと前から彼のことを知っていたのだ。
いつもテストでは主席をキープし続けているティエリア、しかし決まって理数系の科目だけ彼女を上回る成績を取っている人物がいた。
総合点では主席だったけれど、科目別で見るとどうしても勝てない相手がいたのだ、それがハレルヤだった。
しかも先日ハプティズム邸を訪れたとき、そのハレルヤに襲われかけたのだ。
「ハレルヤのこと知っているの?」
「ああ、素行の悪さは学校一と評判だ」
「さすが俺、有名人」
皮肉を浴びせかけるティエリアにも気分を害する事なく笑っているハレルヤにティエリアは眉間に皺を寄せる。
「ハレルヤ、これから出掛けるんだろう?」
雲行きの怪しいのを察したアレルヤは、ハレルヤを家から追い出そうと試みる。
「別に、何もねぇけど」
アレルヤの気持ちを知ってか知らずか家に居座るような発言をするハレルヤ。
「つうか、何しにきたの?セックス?」
「ばっ、何を言っているんだ!!」
ハレルヤの発言にアレルヤは焦って否定をしている、それを楽しんでいるハレルヤ。
ティエリアもからかわれているアレルヤを傍観しながら黙っていた。
「ぼ、僕はただ、ティエリアに勉強を見てもらって、それでいい点数が取れたからお礼を!!」
「ああ、そう。お前数学できねぇもんな、俺と違って」
アレルヤの揚げ足を取りながらからかっているハレルヤ。
「あの、いいか…?」
「ご、ごめんねティエリア、ハレルヤのいう事なんか信じないで!!」
「ああ、それは…そうなのだが…」
埒の明かなそうな言い争いに口を挟んだティエリアに、必死で謝るアレルヤ。
「僕等、部屋に行くからハレルヤ静かにしてくれよ」
玄関へ上がり、ティエリアの背を押して自室へと促す。
「ヘイヘイ、ゴムは付けろよ」
「ハレルヤ!!」
最後まで兄であるアレルヤをからかう弟、兄弟のやり取りをまじかで見て微笑ましさを感じたティエリアだった。